| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-183  (Poster presentation)

標高0~3000mに分布するミヤマハタザオ集団の発芽と初期成長特性 【B】
Characteristics of germination and initial growth in Arabidopsis kamchatica populations across 0-3000 m elevation 【B】

*芳澤あやか, 關岳陽, 田中健太(筑波大学)
*Ayaka YOSHIZAWA, Takeharu SEKI, Kenta TANAKA(University of Tsukuba)

 アブラナ科多年生草本・ミヤマハタザオArabidopsis kamchatica ssp. kamchaticaは、0~3000 mという幅広い標高に分布しており、その適応機構が興味深い。高標高集団では有毛型、低標高では無毛型が主に分布することに注目し、標高適応における葉毛の機能解明に取り組む予定である。その予備検討として、発芽・初期成長特性と標高の関係を報告する予定であったが、2014年以前に採取した45集団由来の種子が発芽せず、こうした関係を検討できなかった。そこで、毛の物理ストレス耐性の解明に向けた検討として、(1)実験的除毛手法の開発、(2)実験的降霜条件の開発、(3)埋雪ストレス耐性についての予備実験の結果を報告する。
 (1)有毛系統に対して除毛処理ができれば、同じ遺伝的バックグラウンドの下で有毛・無毛を比較でき、毛の機能をより明確にできる。除毛方法として、マイクロ剪刀で毛を切ると、毛以外の葉組織に触れずに、毛以外の組織に影響を与えずに比較的短時間で除毛できた。(2)植物栽培機(インキュベーター)でミヤマハタザオの葉面に降霜させる条件を検討した。植物をビニール袋に封入して中を加湿した後に、植物入りビニール袋を植物栽培機に入れて冷凍温度に下げると、葉面に降霜した。その際、無毛の葉では葉の表面に霜が付き、有毛の葉では毛先に霜が付く傾向が見て取れた。(3)埋雪実験では、1つの無毛系統と、2つの有毛系統を除毛処理または無処理したものを用意する(計無毛3個体・有毛無処理6個体・有毛除毛処理6個体)。これらの個体の野外または植物栽培機内に置く。植物栽培機は凍結温度をまたぐ温度変動条件にして、雪の融解・再凍結・圧縮が起きるようにする。約2週間ごとに計5個体を掘り出し、常温条件で栽培して生存率・含水率を測定して、系統や処理との関係を解析する。


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