| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-185  (Poster presentation)

新鮮な有機物から無機化するリンが火山灰土壌の一次遷移に与える影響
Phosphorus mineralization in fresh organic matter and plant growth on volcanic ash soil

*片山彩, 舘野正樹(東京大学)
*Sae KATAYAMA, Masaki Tateno(University of Tokyo)

火山灰土壌はリンを強く吸着するが、そこに成立する自然植生ではリン欠乏が見られない。そこで、植物がどのような仕組みでリン欠乏を解消しているのか解明することを試みた。特に、土壌に供給される有機物の効果に注目した。
(1) 火山灰土壌の一次遷移は、イタドリ、ヤマハンノキの順番で侵入するが、それぞれの段階でどのようにリン欠乏を解消しているのかという課題を設定した。そこで、自然状態を再現した実験系を考案し、その系に有機物(葉)や無機栄養(窒素、リン)を添加することで、植物の成長に必要な栄養条件を比較し、自然植生の土壌―植物系のリン循環について検証した。窒素固定植物のヤマハンノキでは、有機物添加による成長改善が顕著に見られ、新鮮な有機物から早期段階でリンが溶出し、それを窒素固定植物が利用できていることが確定的になった。また、遷移初期に侵入するイタドリは、窒素とリンが両方なければ生育不可能であった。以上の結果より、一次遷移の初期段階では、イタドリは降水中の窒素成分と火山灰土壌中で吸着の外れた一部のリンを利用しながらゆっくりと成長することが考えられる。さらに、有機物が蓄積して溶出するリンの量が増える段階で、窒素固定植物のヤマハンノキの侵入も可能になることが示唆された。
(2)植物の成長に有効な有機物はどの層にあり、それがどのようなC14年代や栄養条件を持っているのかという課題を設定した。そこで、軽石、黒ボク土、表土の3つに土壌の層を分け、それぞれの土壌の性質を分析した。さらに、それらの土壌における植物(イタドリ)の成長率を比較した。その結果、植物は火山灰土壌上部および土壌表面の新鮮な有機物から溶出する栄養を利用していることが明らかになった。有機物年代が古い土壌下部(黒ボク土など)は無機栄養の供給にはほとんど寄与しないため、植物の根圏は土壌表層近くに限られることが示唆された。


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