| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-203  (Poster presentation)

標高間変異における選択と遺伝子流動の影響力の評価:ハクサンハタザオの全ゲノムから
Estimation of effects of natural selection and gene flow on altitudinal adaptation by whole-genome resequencing of Arabidopsis halleri

*吉田直史(東北大学), 若宮健(東北大学), 鳥居怜平(九州工業大学), 小口理一(東北大学), 石井悠(東北大学), 藤井伸治(東北大学), 久保田渉誠(東京大学), 森長真一(日本大学), 花田耕介(九州工業大学), 河田雅圭(東北大学), 彦坂幸毅(東北大学)
*Naofumi YOSHIDA(Tohoku Univ.), Takeshi Wakamiya(Tohoku Univ.), Ryouhei Torii(Kyutech), Riichi Oguchi(Tohoku Univ.), Yuu Ishii(Tohoku Univ.), Nobuharu Fujii(Tohoku Univ.), Shousei Kubota(Tokyo Univ.), Shin-ichi Morinaga(Nihon Univ.), Kousuke Hanada(Kyutech), Masakado Kawata(Tohoku Univ.), Kouki Hikosaka(Tohoku Univ.)

 幅広い環境に生息する種では、それぞれの生息環境における選択圧に局所適応した結果、形質や遺伝子に種内変異が生じる場合がある。これまで、局所適応においてどの様な形質や遺伝子に変異が生じているか、様々な生物種を対象として多くの研究が進められてきた。その一方で、異なる環境の中間領域では変異がどのようになるかはあまり着目されてこなかった。標高傾度においては比較的狭い範囲内で急激に変化する環境に対応した種内変異が見られる場合があるが、多くの例で適応集団間の地理的距離は短くなり、分布は連続的になる。このとき、標高適応に関連している複数の形質、遺伝子間で変異の標高依存パターンは同じであるだろうか。例えば、ある遺伝子多型は中間標高帯において不連続的に置き換わるが、別の遺伝子多型は標高に沿ってなだらかに変化するということがあるだろうか。
 Kubota et al.(2015)は滋賀県伊吹山と三重県藤原岳で見られるハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)の標高間変異について全ゲノム解析を行い、標高依存的なアリル頻度の変化を示す遺伝子多型を多数特定した。一方で、Kubota et al.(2015)のデータセットではこれらの遺伝子多型の標高依存パターンを定量的に解析できていない。本研究では、Kubota et al.(2015)で特定されたハクサンハタザオの標高間変異に着目し、標高傾度において空間解像度の高いゲノムデータセットを得ることで、遺伝子多型のより細かい標高依存パターンを解析した。その結果、遺伝子間、同一遺伝子上のSNP間で変異の標高依存パターンが異なる場合があることを明らかにした。また本研究では、これら標高間変異の標高依存パターンの違いが、遺伝子流動や標高傾度における選択圧の影響を反映しているものかどうか考察を行った。


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