| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-225  (Poster presentation)

陸産貝類において中間型を示す殻の色は生存に不利となるのか-標識再捕獲による検証-
Estimating survival rate with the intermediate shell colour of land snails using the mark-recapture approach

*伊藤舜, 小沼順二(東邦大学)
*Shun ITO, Junji KONUMA(Toho Univ.)

 両極端に位置する表現型に対して有利だが、中間型に対して不利に働く自然選択を分断選択という。分断選択は表現型を多様化させ、表現型多型の維持や生態的種分化を駆動する機構の一つとして進化生物学において重要視されてきた。しかし、分断選択を野外で実証する上では、長期にわたって十分な個体数の野外調査を行う必要があり、その実証研究は未だ非常に少ない。分断選択により表現型が多様化したと考えられる実例として、伊豆諸島に生息するシモダマイマイ Euhadra peliomphala simodae における殻色の二型が挙がる。先行研究により、本種の黒色と黄色の二型は、島嶼の新規ハビタットに適応した結果、急速に生じたことが示唆された。本研究では多様化を促す選択が、本種の殻色に対して働いているのかを検証するために、伊豆諸島の新島で1年半に渡り、20回の標識再捕獲調査を行った。これにより、黒色と黄色の二型以外にも中間型が確認された。しかし中間型の個体数は、非常に少なかった。これらの殻色の個体数変動は、季節に伴い同調した振動を示していた。そして中間型の生存率は、黒色と黄色の生存率よりも、低い生存率であることを推定した。これは殻色に対して、分断選択が生じていることを示唆する。本研究による結果は、先行研究で示唆された島嶼の新規ハビタットに適応した結果として、殻色の多様化が生じたという仮説を支持している。本研究で実証した分断選択は、島嶼の陸産貝類における適応放散を駆動する機構を説明するかもしれない。


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