| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-227  (Poster presentation)

石狩川流域のハムシ個体群は今そこで進化しているのか?
Do leaf beetle populations in the Ishikari basin show contemporary evolution?

*波多腰純也(北大・環境科学院), 内海俊介(北大・FSC)
*Junya HATAKOSHI(Hokkaido Univ.), Shunsuke Utsumi(Hokkaido Univ・FSC)

 近年、進化が迅速に起こりうるという実証研究がなされてきており、進化動態と生態動態の双方向の作用が徐々に知られてきている。進化は生物間相互作用を変化させ、このことは将来の進化速度や方向性に影響を与えうる。しかしながら、これまでの研究では例えば2種系のような、単純な群集を対象としたものや、室内実験が主である。さらに個体の移出入や景観要素は進化に影響を与えるため重要であるが、この分野ではまだ考慮されていない。そのため野外における進化と生態の相互作用の実態理解には及んでいない。
 本研究は、ヤナギ類の植食性昆虫であるヤナギルリハムシ Plagiodera versicolora (以下、ハムシ) が実際の野外において、迅速に進化しているのかを明らかにすることを目的とする。特に地域間の進化速度・進化の方向の違い、さらに個体の移出入や地点の景観要素を考慮することにより、野外での進化動態の実態解明に迫る。
 北海道石狩川流域を対象に、河川源流域から河口域まで、等間隔に15の調査地域を設けた。ハムシのサンプリングは、1ヶ月おきに計3回行い、合計1,118個体のサンプルからDNAを抽出した。そして、ハムシのスペシャリスト・ジェネラリスト形質に関連するSNPマーカーのジェノタイピングと、中立なSTRマーカーのジェノタイピングを行った。それによって、適応形質の進化動態と移出入の動態を調べた。
 SNPマーカーの解析により、1)アリル頻度の時間変化があること(迅速な進化)、2)地域ごとにアリル頻度が異なること、3)地域ごとに異なる進化動態があることが分かった。さらに4)アリル頻度の変動パターンには、河川上流から下流にかけての景観要素と進化動態の関連も示唆された。
 本発表では、以上の結果にSTRマーカーの解析結果もふまえ、ハムシの個体群が示す迅速な進化動態の実態を議論する。


日本生態学会