| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-244  (Poster presentation)

CAM植物の混植とバイオ炭の導入は屋上緑化の最適な土壌水分環境の保持を可能にする
Companion planting of CAM plants and the amendment of biochar enable a retention of optimal soil water condition on green roof

*松岡達也, 土屋一彬, 大黒俊哉(東大・農)
*Tatsuya MATSUOKA, Kazuaki Tsuchiya, Toshiya Okuro(The University of Tokyo)

 都市域における訪花昆虫は、花粉媒介の促進、蜂蜜生産などにより、生態系サービス向上に寄与することが期待されている。この働きを補助するために、屋上緑化への蜜源植物の導入が推奨されている。近年普及している粗放型屋上緑化は建築物の荷重制限に合わせて設計されるが、薄層土壌上で最低限の潅水量のもとで緑化を施すため、導入可能な植物種の僅少さが課題とされてきた。土壌水分量を増加させ、植物の生育を改善させる方策として、セダムの混植や土壌へのバイオ炭混合が知られている。しかし、これらを組み合わせた場合の生育改善効果については詳細に解明されておらず、バイオ炭混合土壌にセダムを混植することで、植物の生育が顕著に改善される可能性がある。
 よって本研究では、バイオ炭混合の有無、セダム(Sedum album)混植の有無で植栽区を分別し、蜜源植物(Mimosa pudicaRosmarinus officinalis)を用いた栽培実験を行った。バイオ炭を体積比0%、15%、30%、60%加えた結果、その混合率に応じて土壌水分量の増加がみられた。一方で、バイオ炭混合時はセダム混植による生育改善効果がほとんどみられなかった。セダムはCAM植物であるため、乾燥条件下でないとCAM型光合成による蒸散抑制がみられない。よって、土壌水分に恵まれた環境下ではセダム混植による土壌水分量の増加が誘導されず、生育改善効果がみられないことが推察された。一方、バイオ炭の混合率に応じて植物体サイズは増加したものの、枯死個体の割合も共に上昇した。これは、バイオ炭混合により土壌水分環境が改善され、植物体の成長が促進された結果として、急激な乾燥ストレスに対応できず、生育が悪化したためと推察された。
 以上の結果から、セダム混植による生育改善効果は乾燥条件下でみられること、過剰なバイオ炭混合は植物体の生育を悪化させることが示された。


日本生態学会