| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-261  (Poster presentation)

里山里海における生物多様性と生態系サービスの関係:聞き書き甲子園と佐渡の海藻利用
Relationship between biodiversity and ecosystem services in Japanese Satoyama & Satoumi

*八嶋桜子(東京大学), 小川みふゆ(東京大学), 豊田光世(新潟大学), 宇治美徳(佐渡市役所), 吉田丈人(東京大学, 総合地球環境学研究所)
*Sakurako Yashima(University of Tokyo), Mifuyu Ogawa(University of Tokyo), Mitsuyo Toyoda(Nigata University), Yoshinori Uji(Sado City Hall), Takehito Yoshida(University of Tokyo, RIHN)

 生態系サービスが実際に利用されるには、生態系サービスが供給されるだけでなく、生態系サービスに対する人間側の需要が必要である。また、生態系サービスの供給と需要は、自然資源の管理や利用に関する人間側の知識に支えられている。里山里海では、これらの知識が受け継がれてきたことで、生態系サービスが持続的に利用されてきた。しかし、現代における自然体験の減少は経験の消失に、自然資源利用の減少はアンダーユースの課題となり、知識の消失が懸念されている。本研究では、まず、生態系サービスの需要と生物多様性との関係を明らかにすることを目的として、NPO法人共存の森ネットワークが実施している「聞き書き甲子園」に収録されたテキストを分析した。次に、経験の消失の現状と知識継承との関係を明らかにすることを目的に、新潟県佐渡市において海藻利用の現状と知識の継承経路を調査した。
 日本全国から収集された「聞き書き甲子園」の1,168話には、生態系サービスの需要に関する知識が合計3,888件あり、それらの生態系サービスは405の植物分類群と関係していた。植物の多様性と生態系サービスの類型数との関係には高い冗長性が見られ、同じ生態系サービスを支える植物分類群が多く存在した。佐渡市における10種の海藻の食利用を調査した結果、全ての世代において海藻を食べ始めた年齢は20才以下が多かったものの、若い世代ほど食利用経験のある海藻種数が少なく、経験の消失が生じている可能性が示唆された。海藻に関する知識は主に母親から継承されていたが、2000年代以降に生まれた世代では、それ以前の世代に比べて、母親から知識を継承した機会が少なかった。経験の消失が生じている原因として、母親に代わる伝承者が不在なことや、各種の継承ツールが十分に発達していないことが示唆された。
 (独)環境再生保全機構環境研究総合推進費S-15の支援を受けた。


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