| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-314  (Poster presentation)

ゴマシジミの集団サイズの違いが宿主植物への被食圧および種子繁殖補償にもたらす影響
Effect of differences in population size of scarce large blue butterfly on feeding pressure and seed reproductive compensation in host plants

*内田葉子, 大原雅(北大・院・環境科学)
*Yoko UCHIDA, Masashi Ohara(Hokkaido Univ. Env. Science)

植物は様々な草食動物からの食害を受けるが、その食害に対して防衛戦略を持つものが存在する。防衛戦略には、事前に摂食を回避する「防御機構」と、捕食後に成長や種子生産の低下を補う「補償反応」の2つが知られている。本研究の対象種であるナガボノシロワレモコウ(以下、ナガボ)は、1個体当たり複数の穂状花序(花穂)を付ける多年生草本である。また、チョウの一種ゴマシジミはナガボの花穂にのみ産卵し、孵化した幼虫がナガボの子房や胚珠を摂食する。これまでの研究により、ゴマシジミはナガボの茎頂の花穂に1個産卵する傾向があること、そして、摂食を受けたナガボ個体では別の花穂が生産果実数を増加させることにより個体レベルの果実生産を保つ補償機能の存在が確認された。
本研究は、この両種の関係の普遍性あるいは変異性をより明らかにするために、ゴマシジミの生息数が異なる7つのナガボ集団(ゴマシジミが生息していない1集団を含む)を対象に、①ナガボおよび生息環境、②ゴマシジミの産卵傾向および、③摂食によるナガボの果実生産への影響を調査した。ナガボは環境により形態や開花フェノロジーに違いが見られた。ゴマシジミの産卵傾向は、ナガボのフェノロジーやゴマシジミの生息数により、茎頂以外の花穂にも産卵することが明らかになった。果実の生産量はゴマシジミの摂食の有無にかかわらず、今年度は全体的に結果率が低かったが、果実重共に被食圧の違いによる地域差は見られず、また、摂食に対する補償反応を示さない集団も認められた。以上の結果から、ゴマシジミの集団サイズによりゴマシジミ産卵傾向が変化することが示唆された。一方、ナガボの果実生産量および補償反応の有無は、ゴマシジミの集団サイズよりも当年の環境条件に左右され、ナガボの地域集団および年によって異なることが考えられる。


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