| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-328  (Poster presentation)

洞爺湖中島におけるシカ密度低下後の下層植生の変化
Variation in the understory vegetation after reduction of deer in Nakanoshima Island, Lake Toya

*内村耕大, 宮木雅美, 松山周平(酪農学園大学)
*Kodai UCHIMURA, Masami MIYAKI, Shuhei MATSUYAMA(Rakuno gakuen university)

 洞爺湖中島では防鹿柵の設置やシカ密度管理が進められ、2007年で300頭弱だった個体数は、2018年には50頭から100頭ほどまで減少した。その為、現在では洞爺湖中島の下層植生は回復してきている可能性がある。そこで、本研究では洞爺湖中島におけるシカ密度管理による植生回復効果を評価する為に、1984年、2004年に設置された柵の内外、計20箇所のプロットを1m×1mのサブプロットに4分割し、全体の被度、最大植生高、種ごとの被度、種ごとの最大植生高を、2018年に調べ、強度のシカ密度管理が行われる前(10年以上前)のデータと種レベル、生活型レベルで比較した。
 シカ密度低下前の出現種数は83種であったが、2018年には68種になっていた。2018年における出現種数,種多様度、被度、最大植生高は、調査区間の違いが大きく、シカ密度低下前と比べて有意な違いはなかった。一方、生活型レベルでは柵外における高木、低木の被度は2018年に有意に増加していた。高木の被度増加はシカ嗜好性実生によるものであったのに対し、低木の被度増加は、シカ密度低下前から見られたシカ不嗜好性種の優占が進んだものであった。これらは、シカ密度低下により植生が回復しつつあるが、一部の調査区においてシカ不嗜好性種の優占が、新たな種の侵入・定着を妨げていると考えられた。洞爺湖のモニタリングプロットのように立地や既存植性が異なっているところで植生の変化を分析する場合には、生活型レベルでの分析が適していることが示唆された。


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