| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-335  (Poster presentation)

コバントビケラ(Anisocentropus kawamurai)幼虫の巣材,及び餌選択性に関する研究
Nest material and bait selectivity of larvae of Anisocentropus kawamurai

*野本将太郎, 河内香織(近畿大学)
*Shotaro Nomoto, Kaori Kochi(Kindai Univ.)

水生昆虫は河川生態系内において重要な役割を担っている(加賀谷,2013)。中でもコバントビケラは摂食・造巣に落葉のみを用いる。現在調査中のコバントビケラの生息域となっている河川の周辺の樹種構成は、人工スギ林が大半を占めており、多くの水生昆虫の生育に必要な広葉樹は川岸にまばらに確認できる程度である。奈良県では準絶滅危惧種に指定されている。奈良県のコバントビケラの生育に必要な樹種を明らかにし、造巣行動を映像化し、詳細を明らかにすることで知見を増やそうと考えた。17℃のインキュベーター内で、クリーンカップに現地で採集したケヤキ,ウワミズザクラ,アラカシ,ハゼノキ,ヤブツバキ,イロハモミジの、それぞれの落葉を1枚ずつ計6枚と、河川水を650ml入れ、1ヶ月間のコンディショニングを行った。その後、そのまま落葉のみのもの、コバントビケラを追加したものに分け、さらに1ヶ月間、合計2ヶ月間、2処理×10反復行った。すべての容器にエアレーションを施した。それぞれの実験前と実験後の落葉の乾燥重量、実験直後の落葉の硬度分析の結果から、落葉残存率(以下①)、摂食による落葉減少率(以下②)、造巣行動による落葉減少率(以下③)、水中の落葉硬度(以下④)を算出し、分析を行った。また、iPhone6を用いて摂食・造巣の様子を映像化し、どのような特徴があるかを記録した。①と④は、強い正の相関を示した。②と④は、落葉硬度が有意に低い樹種を除くと強い負の相関を示した。③と④は、強い正の相関を示した。映像からは、本種の造巣は非常に時間がかかること、新しく巣を切り出しても気に入らなければ巣をもう一度切り出すこと、必ず落葉の下に潜り込み背側の巣から作ることが明らかになった。摂食には硬度が低い樹種、造巣には硬度が高い樹種を選択することから、本来は幅広い樹種構成が必要であると考えられる。しかし巣材に適した硬度の落葉があれば、造巣は可能であると思われる。


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