| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-361  (Poster presentation)

潜葉虫とその寄生蜂群集の寄主利用様式
Patterns of host use in leafminers and their associated parasitoid wasps

*鳥居裕太(名古屋大学), 綾部慈子((公財)環境研), 肘井直樹(名古屋大学)
*Yuuta TORII(Nagoya Univ.), Yoshiko Ayabe(Inst. Environ. Sci.), naoki hijii(Nagoya Univ.)

植食性昆虫の個体群密度は、寄主植物のフェノロジーや食物の質と、天敵からの捕食寄生圧によって調節されていると考えられている。植物の特性や天敵の寄生様式は植食性昆虫の生存過程に大きな影響を与えるため、これらの種間相互作用を明らかにすることは、群集の形成機構や動態を解明する上で重要である。本研究では、潜葉虫(leafminer)に焦点をあて、寄主植物―潜葉虫―寄生蜂からなる三者系の群集構造と、潜葉虫の密度レベルに影響を及ぼすと考えられる要因を、2年間のルートセンサスにより明らかにした。
採取した32種の植物上に49種類の潜孔が確認され、4目37種の潜葉虫が羽化した。ほとんどの潜葉虫は、いずれの年も同じように各寄主植物の当年葉の展開後に確認され、展葉フェノロジーとの同調性が認められた。寄生を受けていた25種の潜葉虫からは4科33種の寄生蜂が羽化したが、このうち15種は複数種の潜葉虫に寄生する広食性であった。コマユバチ科寄生蜂はすべて飼い殺し型で狭食性であったが、二次寄生する種を含んでいた。一方、ヒメコバチ科寄生蜂の多くは、殺傷寄生型で広食性であった。殺傷寄生蜂は、潜葉虫の発生初期に産卵する飼い殺し寄生蜂に寄主を先取りされても、それらに二次寄生を行うことで共存できるため、こうした多様な寄生様式が寄生蜂群集の多様性創出に寄与しているものと考えられる。
さらに、ヒサカキを寄主植物とする3種の潜葉虫について、それぞれの生活史特性の違いが生存過程に及ぼす影響を検証した。このうち、潜葉期間が相対的に長く、潜孔を他の葉の陰に形成する傾向の強いヒサカキムモンハモグリについて野外操作実験を行ったところ、他の葉の陰に形成された潜孔の生存率は、露出させた潜孔よりも有意に高かった。このことから、潜葉虫にとって潜孔を寄生蜂から視覚的に逃れるように形成することは、生存率の向上に寄与する戦略であることが示唆された。


日本生態学会