| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-396  (Poster presentation)

都市緑地に生息するヒガシニホントカゲの個体群構造と成長
Population structure and growth of the lizard (Plestiodon finitimus) in the isolated woods

*岸村真央(首都大学東京)
*Masahiro Kishimura(Tokyo Metropolitan Univ.)

ヒガシニホントカゲ(Plestiodon finitimus)は伊豆半島を除く近畿以東の本州および北海道に自然分布する,我々にとって最も身近なトカゲ類の1種である。本研究では,東京都八王子市にある孤立緑地において,個体群の年齢構造,体長組成,成長を明らかにするために,2年間にわたる標識再捕獲調査を行った。2017年5月から11月および2018年3月から11月にかけて,原則として週に一度,9時から16時の間にセンサス調査を行い,採餌や日光浴等で地表活動を行っている個体を捕獲した。捕獲した個体は研究室に持ち帰り,頭胴長,体重,性を記録して指切り法を用いて標識を施した後,捕獲地点へ放した。この調査に加えて調査地の一部で捕獲のみを行う短時間調査を随時行った結果,合計65日の調査で272個体を374回捕獲することができた。捕獲を試みたが逃げられてしまった個体を含めると,観察地点数は545に及んだ。標識した272個体のうち,62個体が2回以上捕獲された。 Robust Designモデルを用いて6ヶ月毎の個体数推定を行った結果,234~645個体(平均421, N=4)が調査地内に生息していると推定された。頭胴長は雄が55~78 mm(平均65.6 mm, SD = 4.97, N = 96),雌が56~74 mm(平均67.2 mm, SD = 4.99, N = 53),幼体が26~67 mm(平均49.6 mm, SD = 9.18, N = 224)であった。本調査地に生息する個体はこれまでの他地域の研究と比較すると小型であることが分かった。また,標識時に切り取った指の骨組織中の成長停止線の観察に基づき,各個体の年齢を推定した。捕獲した個体のうち,2歳以上と思われる成体を中心に合計130個体の年齢が推定でき,調査地内の最高齢は4歳であった。年齢と頭胴長の関係からBertalanffyのモデルを用いて成長曲線を求めた結果,月齢tに対する頭胴長Lの値はL = 81.2 (1 – e-0.045 (t+12.47))と表すことができ,頭胴長の最大値は81.2 mm(95%信頼区間76.0 ~ 86.4)と推定された。


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