| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-407  (Poster presentation)

待ち行列モデルの自動動画撮影カメラにおける哺乳類の相対密度指標評価への応用
Application of queuing model to evaluation of relative abundance index by camera trap

*相澤良太(筑波大学), 深澤圭太(国立環境研究所), 上條隆志(筑波大学)
*Ryota AIZAWA(University of Tsukuba), Keita FUKASAWA(NIES), Takashi KAMIJO(University of Tsukuba)

自動撮影カメラの撮影回数を調査日数で割ることで算出される哺乳類の相対密度指標である撮影頻度指標(RAI)は、式が平易な一方、多くのバイアスが指摘されている。本研究では、自動動画撮影カメラを用いたRAIにおける群れ性によるバイアスについて、待ち行列モデルを応用した評価を目的とし、シミュレーションを行った。まず、哺乳類のカメラの撮影範囲への侵入を待ち行列における“到着”と置き、到着間隔時間の確率分布を平均μのLomax分布に指定した。Lomax分布は形状母数αを増加させると単独性の動物の到着時間間隔を示す指数分布に近似し、αが小さいと群れ性の動物を示すことができる裾の重い分布になる。シミュレーションでは、個体が撮影範囲に入った場合のセンサーへの反応確率を「検知率」とし変化させて検証した。さらに、群れ性バイアスを下げうる指標として、RAIの撮影回数を総撮影個体数に置き換えた密度指標(RIAI)を定義した。それぞれの密度指標に対し、μの逆数(密度に比例)との関係を評価した。μを変数としてGLMを用いて、密度指数=𝑎(1/𝜇)^𝑏とする回帰を行った。 バイアスがない場合、次数bは1となる。次数bについてαと検出率を変化させて群れ性の影響を評価した。その結果、RAIにおける次数bはどの条件下でも1を下回った。一方、RIAIでは検出率1.0を除き、次数は1を上回った。また、どちらの指標でも群れ性でバイアスが大きくなった。検出率については、RAIにおいて高検出率でバイアスが大きくなる結果となったことから、自動動画撮影カメラを用いた研究ではRAIは低検出率下でのみ使うべきであると示唆された。本研究の結果から、自動撮影カメラのバイアスの評価に待ち行列モデルを用いることの可能性が示された。


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