| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-438  (Poster presentation)

林齢の異なる森林における林冠と下層植生の葉群構造
Crown and understory foliage structure in cool-temperate forests of different age

*谷岡庸介(筑波大学), 井田秀行(信州大学), 廣田充(筑波大学)
*Yosuke TANIOKA(Tsukuba Univ.), Hideyuki Ida(Shinshu Univ.), Mitsuru Hirota(Tsukuba Univ.)

 森林はギャップ構造や階層構造に代表されるように空間的に不均一である。この不均一な構造によって、生産量を決定する葉が森林内の様々な位置に配置されている。 しかし実際に葉群がどのように空間分布しているかを調べた研究は少ない。特に下層植生の生産量は評価されないことも多く、森林生態系の生産量を正確に定量化するためには、下層植生を含む葉群の空間分布を把握する必要がある。本研究では複数の森林を対象として森林全体の葉群の空間分布を調査し、その要因を明らかにすることを目的とした。
 本研究ではLAI(葉面積指数)を葉群として扱った。本研究ではLAIを多点計測する必要があるため、LAIの計測に分光手法を用いた。林齢と構成種が異なる3つの森林(落葉広葉樹林、常緑針葉樹林、針広混交林)でLAI計測を行った。それぞれの森林に設置してある固定調査区(1 ha)を対象として10 m間隔の格子点を設け、各点で下層植生を含まない高さ2.5 mより上の上層LAIと地表面から高さ2.5 mまでの下層植生を含む全層LAIを計測した。また各点について全層LAIから上層LAIを引くことで、下層LAIを計算した。
 森林全層LAIおよび上層LAIのどちらも、同一森林内であっても場所によって変化することが明らかになった。例として落葉広葉樹林では全層LAIが最大4.5、最小2.5であり、上層LAIは最大3.9、最小1.2であった。全層LAIと上層LAIの間には相関関係は無く、下層LAIと上層LAIの間に負の相関が見られたことから、下層植生がギャップを補っていると考えられた。また森林間でLAIの不均一具合は異なった。上層LAIの変動係数は落葉広葉樹林で0.29、常緑針葉樹林では0.73、針広混交林では0.26であった。常緑針葉樹林は一番林齢が高く、老齢林は若齢林よりも不均一であるとする先行研究と同じ結果となった。本研究から森林の葉群は空間的に不均一であり、不均一具合も森林によって変わることがわかった。


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