| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-443  (Poster presentation)

バイオチャー散布が暖温帯コナラ林の光合成に与える影響 -無機栄養塩との関係ー
Effect of biochar application on photosynthesis in Quercus serrata forest

*棚澤由実菜(早稲田大・院・先進), 月森勇気(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 鈴木武志(神戸大・農), 小泉博(早稲田大・教育)
*Yumina TANAZAWA(Waseda Sci. & Engi.), Yuki TSUKIMORI(Waseda Sci. & Engi.), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Waseda Edu.), Takeshi SUZUKI(Kobe Univ.), Hiroshi KOIZUMI(Waseda Edu.)

生物由来の炭化物であるバイオチャーを土壌に散布することでそれを化学的、物理的に改良するといわれている。これは植物に生理的、形態的変化をもたらし、炭素固定能の向上に繋がるとされている。しかし木本植物を対象にしてバイオチャー散布が炭素固定能に与える影響を明らかにした研究は少ない。本研究ではバイオチャー散布がコナラの光合成特性と葉の形質(元素濃度、LMA)に与える影響を調査した。

対象とする樹木を中心に半径2 mの円形区を設置後、2017年5月にバイオチャーを0、5、10、20t ha⁻¹の4段階で散布し、翌月から2018年11月まで毎月調査を行った。最大光合成速度(Pmax)、最大カルボキシル化速度(Vcmax)、電子伝達系潜在速度(Jmax)と気孔コンダクタンス(gs)をLI-6400を用いて測定した。また葉内の元素濃度を測定するために2017年11月に葉をサンプリングし、過塩素酸法で全分解した後ICP-MASを使用した。さらに面積当たりの葉乾重量(LMA)も2018年11月に計測した。

Pmaxは散布1、2年目ともに年間を通じて5、10t区で0t区より1.5-3倍高い値を示した。同様にVcmaxとJmaxの値も約2倍大きく、バイオチャー散布により炭素固定能が増加したことが明らかになった。その理由として以下の3つの要因が示唆された。①葉内のP、K、Mg、Zn濃度の増加;いずれの元素も5、10t区では0t区より10-40%高い値をとっており、バイオチャー散布により光合成に必要な無機栄養が葉内に供給されたと考えられる。②gsの増加;5、10t区では0t区より1.5-5倍高い値を示しており、光合成の基質であるCO₂の吸収能が向上した可能性が見出された。③LMAの増加;LMAは10t区で0t区より40%増加し、光合成に関わる器官が葉面積当たりで増加したと推察される。


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