| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-454  (Poster presentation)

暖温帯コナラ林における林床面蒸発量と基底流出量の長期連続測定
Long term measurements of evaporation from forest floor and base outflow in a Quercus serrata forest

*秋場遥輔(早稲田大・院・先進), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)
*Yosuke AKIBA(Waseda Sci. & Engi.), Nobuhiko Suminokura(Waseda Sci. & Engi.), Mitsutoshi Tomotsune(Waseda Edu.), Hiroshi Koizumi(Waseda Edu.)

森林生態系の水循環プロセスには多様な経路が存在する。それらの経路はそれぞれ異なった要因による独立した現象であるので、個別に測定し評価する必要がある。そこでここでは、土壌からの主要な流出経路である林床面蒸発と基底流出の2つに着目して研究を行った。
林床面蒸発量は長期測定やスケールアップが困難である。また、基底流出量は他の水動態の経路との同じ基準での比較が困難である。そこで、以下の装置を開発した。直径15 cm、深さ50 cmの大型の土壌コアに土壌を充填し、錘とワイヤーで繋ぎ、滑車を介してつり合わせた。さらに、土壌コアの下部に雨量計を埋設した。錘は台秤の天板に固定した。土壌コアの水収支を重量変化として記録し、土壌コア下部の流出量を雨量計で記録することで林床面蒸発量と基底流出量を評価した。この装置の利点として2つの経路を同一の時空間スケールで測定できること、土壌コアの微小な重量変化を記録できること、長期間の連続測定が可能であることが挙げられる。以上の装置を用いて両経路の変動の様子とその要因の解明を行うことを目的とした。
1日当たりの林床面蒸発量は夏季に最大となり9月、10月では減少したが、その後11月に再び増加するという季節変化を示した。さらに蒸発量と環境要因について解析すると、大気飽差及び光量子束密度との間に正の相関を示し、両要因とも着葉期よりも落葉期で相関係数が低下していた。また、日変化のパターンは大気飽差と一次関数的、光量子束密度に対して頭打ちの傾向を示した。そこで、これら2つの要素を変数としたモデル化を行った。
基底流出についてみると、流出量は林内雨量の変化にしたがった季節変化を示した。林内雨の発生後に基底流出が発生し、林内雨終了後も長時間にわたって続いた。そこで、林内雨と基底流出の量、および時間に着目した解析を行ったところ、林内雨量が多いほど流出が長時間続くことが分かった。


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