| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-503  (Poster presentation)

稀少なチョウの保護活動と草原の植生変化~中国山地の半自然草原~
Influence of conservation activities for endangered butterfly on grassland vegetation. "Semi-natural grassland in Chugoku mountains"

*井之上侑雅, 永松大(鳥取大学・院・農)
*Yuga INOUE, Dai Nagamatsu(Tottori Univ.)

半自然草原はかつて採草地等に利用され、人為圧により遷移の途中相が維持されてきた。しかし現在は放棄・転用のため面積が減少している。これにともない草原性生物の減少・絶滅が深刻な問題になっている。鳥取市佐治町のススキ型山地草原「三原台地」は、1995年以降管理放棄状態にあったが、絶滅危惧種ウスイロヒョウモンモドキ保護のため2004年から草原6.4haの内1.7haで刈払いによる管理が再開し現在に至っている。三原台地は森林に囲まれ孤立しており、外的要因の影響が少ないと考えられる。また、草原内の一部で刈払いが行われているため、同一草原内で管理活動の有無が比較可能である。これらのことから、本研究では、管理放棄と再開にともなう植生構造の変化を明らかにすることを目的とした。また、チョウの食草・吸蜜植物を中心に草原内の植物多様性について考察した。調査は2018年6月から11月にかけて行った。草原内に20mメッシュを設定した。交点上132地点の調査枠は刈払い有無(刈払い区・無管理区)と地形単位(上部・中部・平地・下部)により、8タイプに分類した。調査の結果、総出現種は117種確認された。地点平均出現種数はタイプごとに比較すると、刈払いで増加する傾向が見られた。群落高は刈払い区・無管理区ともに平地で低く、下部で高かった。ススキ被度について刈払い区下部は無管理区と同水準に高かった。無管理区上部の種多様度指数は他の無管理区に比べて著しく低かったが、刈払い区上部は他の刈払い区と同水準に高くなった。地形単位の下部では、刈払い区・無管理区それぞれで最も低くなった。これらから種多様度は刈払いによって増加することが示された。また、刈払いの効果は地形によって異なり上部で最も高くなることが示唆された。種多様度の高いススキ草原を維持するためには、人の関わりが不可欠であるといえる。


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