| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-006  (Poster presentation)

市民参加による大阪府域のオオクビキレガイの分布調査
A citizen science approach for mapping the distribution of an alien land snail Rumina decollata in Osaka Prefecture

*石田惣, 外来生物調査プロジェクト貝類班(大阪市立自然史博物館)
*So ISHIDA, Molluscan Team Alien Species Research Project(Osaka Museum Nat. Hist.)

大阪市立自然史博物館では2015年から大阪・近畿地方を中心に、市民参加で外来生物を調べるプロジェクトを行っている。外来生物は資源競争や交雑などを通して在来の生物や環境に大きな影響を与える。外来生物に伴う様々な問題に取り組むためには、基礎情報として外来生物の分布や生息状況を把握することが重要である。市民参加型調査は広範に情報を集められることや、調査活動そのものが普及啓発につながることなどから、外来生物の分布を把握する上で有用な手段である。一方で、調査方法には工夫や配慮が求められる。これは調査精度を保ち、調査協力者を増やすために欠かせない要素である。
本発表では、プロジェクトの一つとしてオオクビキレガイ(Rumina decollata)の分布調査を取り上げる。本種は地中海沿岸原産のオカチョウジガイ科の陸産貝類で、葉物野菜の新芽を食べる農業被害があるほか、雑食性のため小型の土壌動物への影響も懸念される。大阪では侵入の初期段階のため分布域の絞り込みが十分でなく、また本種は多様な環境に生息しうるため、調査対象地域の広さを踏まえると網羅的な調査は現実的ではない。そこで、ある程度広範かつ均一に調査できて、市民が参加しやすく、かつ到達点が見えるような手法として、大阪府下の鉄道駅から約1km圏内を目安に1時間の探索を行うこととし、駅を踏査単位として調査への参加を呼びかけることにした。
2018年11月現在、のべ107駅の周辺を調査し、うち17駅で見つかった。今までに知られていなかった生息地域が判明したほか、泉北地域で広範に分布することもわかった。分布範囲をスクリーニングするうえで、このような手法は有効だと考えられる。発表では、分布状況から両種の拡大過程等についても考察する。調査の経過は次のサイトで公開している:https://sites.google.com/site/ookubikiregai/


日本生態学会