| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-014  (Poster presentation)

日本列島太平洋沿岸の岩礁潮間帯における外来固着生物の15年間の分布変化
Fifteen-year changes in distribution of rocky intertidal alien sessile organisms on the Pacific coast of Japan

*小林由佳理(北大 環境科学院), 野田隆史(北海道大学), 仲岡雅裕(北海道大学), 山本智子(鹿児島大学), 奥田武弘(水産機構国際水研), 堀正和(水産機構瀬水研), 金森由妃(水産機構中央水研)
*Yukari KOBAYASHI(GSES, Hokkaido univ.), Takashi Noda(Hokkaido univ.), Masahiro Nakaoka(Hokkaido univ.), Tomoko Yamamoto(Kagoshima univ.), Takehiro Okuda(NRIFSF, FRA), Masakazu Hori(NRIFEIS, FRA), Yuki Kanamori(NRIFS, FRA)

世界中での貿易の拡大により、海洋生物の新たな地域への侵入と定着が起こっている。しかし、岩礁潮間帯では自然海岸での外来種の侵入と定着の長期変化は詳しく把握されていない。本研究では、岩礁潮間帯固着生物群集を対象に、日本太平洋沿岸の6地域(親潮域:道東、道南、三陸、黒潮域:房総、南紀、大隅)ごとに(1)出現種数と総アバンダンスを占める外来種の割合、(2)外来種各種の出現頻度と被度、およびこれらの群集内の順位について、2003~2017年の間の時間変化を調べた。出現種数と総アバンダンスを占める外来種の割合はいずれの地域においても数%以下と低かった。出現種数を占める外来種の割合は、道東、道南、三陸で増加し、総アバンダンスを占める外来種の割合も道東と道南で増加していた。また、外来種各種の出現頻度と被度の相対順位は、道東、道南、三陸ではほとんどの種において、増加傾向で、近年には一部の種は上位に入るようになった。出現した外来種は全部で5種であった。各種の出現頻度の動向を見てみると、道東と道南では2006年からキタアメリカフジツボが出現し、その後増加していた。三陸では、調査初年からキタアメリカフジツボとムラサキイガイが出現しており、後者は増加傾向にあった。また、ナンオウフジツボは2014年、ヨーロッパザラボヤは2016年から出現し、前者は増加していた。南紀では2004~2005年にタテジマフジツボが出現した。大隅ではタテジマフジツボが調査初年と2013~2016年に出現し、ムラサキイガイが2016年から出現していたが、出現頻度は低く増加していなかった。以上より、日本の太平洋岸の岩礁潮間帯の固着生物群集において、定着した外来種は少なく、そのほとんどは希少種であった。また、黒潮域では極めて少なく、増加傾向も認められない一方で、親潮域ではこの15年間で増加しつつあることがわかった。なお、侵入成功に影響する要因に関しては現在解析中のためポスターにて発表する。


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