| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-015  (Poster presentation)

愛媛県におけるハシボソガラスによるスクミリンゴガイの捕食条件
Predation condition of Apple snail by Carrion crow in Ehime prefecture

*村上裕(愛媛生物多様性センタ)
*Hiroshi MURAKAMI(E.Biodiversity ctr)

スクミリンゴガイPomacea canaliculataは、水稲稚苗を食害する南米原産の外来生物で、愛媛県では1986年7月に松山市、宇和島市の一部において野生化した本種が確認された。現在、県下19市町中12市町で本種が確認されており、平野部水田地域を中心に広範囲に分布している。本種の水田内での天敵は稚貝時の水生昆虫等が明らかになっているが、成貝の水田内での天敵に関しては知見が乏しい。本県では2008年頃から水田内で本種を捕食するカラス類集団が観察されるようになったが、断片的な情報に留まっていた。本調査では、予備調査でカラス類によるスクミリンゴガイの捕食が確認された水田において、田植日から1時間毎(6:00-17:00)に撮影する定点カメラを30日間設置し、撮影されたカラスの羽数と環境要因との関係を明らかにすることを試みた。また、畦畔上には捕食痕の残る貝殻と死貝が確認されたことから、月旬毎の頻度でカウントし、田植15日後までに畦畔上で確認されたものについて回収し殻長を測定した。撮影期間中、のべ466羽のハシボソガラスCorvus coroneが撮影された。最大撮影羽数は26羽/枚であり、畦畔上で捕食行動も確認された。撮影羽数は田植日から5日後をピークに激減し、同20日経過以降は撮影されなくなった。撮影羽数を応答変数、環境要因を説明変数とした一般化線形モデルでは、田植後の経過日数、田水面の減水と透明度を説明変数としたモデルがAIC最小のモデルとなった。回収した貝の殻長は平均23.2mmで生殖能力を有するサイズが多く含まれていたことから、カラス類は天敵として一定の効果は認められるものの、捕食期間や水田の環境条件が限定されることが明らかになった。


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