| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-038  (Poster presentation)

ナラ枯れが冷温帯林の長期動態に及ぼす影響 【B】
Impact of Japanese oak wilt on dynamics of cool-temperate forest 【B】

*山﨑理正(京大院・農), 金子隆之(京大院・農), 高柳敦(京大院・農), 石原正恵(京大フィールド研), 安藤信(公財・阪本奨学会)
*Michimasa Yamasaki(Grad. Sch. Agric., Kyoto Univ.), Takayuki Kaneko(Grad. Sch. Agric., Kyoto Univ.), Atsushi Takayanagi(Grad. Sch. Agric., Kyoto Univ.), Masae Ishihara(FSERC, Kyoto Univ.), Makoto Ando(Sakamoto Schlp. Fndn.)

ブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)により、冷温帯林ではミズナラが集団枯死し問題となっている。二次林と比較すると天然林では被害率が低いが、大径木の枯死は森林の長期動態にも影響を及ぼしていると考えられる。京都府北東部に位置する芦生研究林のモンドリ谷では、2004年に初めてナラ枯れによる被害が発生し、枯死木は以後2011年まで発生した。本研究では、冷温帯の天然林で発生したナラ枯れが森林の長期動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。モンドリ谷の集水域全域に設置した16haのプロットで、1992年より5年毎に25年間、胸高直径10cm以上の樹木のべ10580個体を対象に毎木調査を継続し、5年間の成長・更新・枯死に関して5期分のデータを得た。ミズナラを含む優占樹種について、胸高断面積合計・更新率・枯死率の変化を確認した。また、優占樹種の直径成長量を予測する一般化加法混合モデルを構築し、25m四方のサブプロット単位でのナラ枯れの発生が周辺木の成長に及ぼす影響を調べた。各調査年の各樹種の胸高断面積合計をサブプロット単位で集計し、非計量多次元尺度構成法(NMDS)を利用して種構成の変化を視覚化した。
1993〜1997年を1期,1998〜2002年を2期,2003〜2007年を3期,2008〜2012年を4期、2013〜2017年を5期とすると、スギは1期から5期にかけて安定的に胸高断面積合計が増加していた。ブナは1期から4期にかけて枯死率が更新率を上回り胸高断面積合計が減少したが、5期には増加した。ミズナラはナラ枯れ発生期の3期と4期に枯死率が更新率を大きく上回り胸高断面積合計が激減したが、被害収束後の5期には増加した。スギとブナではナラ枯れ発生プロットにおける当該時期の直径成長量の増加が認められた。ブナの直径成長量のモデルではナラ枯れの効果を組み込むことであてはまりが改善し、被害木の枯死でできたギャップにより短期的に周辺木の成長が増加したことが示唆された。NMDSの結果は、特に谷部で3期と4期に大きな種構成の変化を示していた。


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