| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-053  (Poster presentation)

岐阜県長良川上流域における繁殖期の森林性鳥類多様性の推定とシナリオ分析
Estimation and scenario analysis of forest bird species diversity during the breeding season in the upper Nagara river basin, Gifu Prefecture

*橋本啓史(名城大), 太田貴大(長崎大), 長谷川泰洋(名古屋産業大), 竹島喜芳(中部大), 児島利治(岐阜大)
*Hiroshi HASHIMOTO(Meijo Univ.), Takahiro Ota(Nagasaki Univ.), Yasuhiro Hasegawa(Nagoya Sangyo Univ.), Kiyoshi Takejima(Chubu Univ.), Toshiharu Kojima(Gifu Univ.)

ある地域における鳥類の分布変化を予測する際,植生タイプ別の鳥類種ごとの生息密度と予測範囲内の植生タイプ別面積の合計から種ごとの個体数推定が行われている事例をしばしば目にする。しかし孤立分断化した森林間を自由に移動しながら生息できる種は限られており,パッチ単位で個体数推定を行い,小数点以下は切り捨てた上で個体数を積み上げるべきと考える。また繁殖期の分布を評価する場合,最低限雌雄1羽ずつの2羽以上が生息できるパッチがあって初めて生息適地と評価すべきであろう。このような考えの下,岐阜県長良川上流域における繁殖期の森林性鳥類を対象に,種ごとの流域内の現状の個体数推定と複数の林業政策下での将来の個体数推定を行った。既存論文に掲載されている林相別種別個体数密度の情報を利用した。そこでの林相区分で対象流域内にある林相は9タイプであった。環境省の植生図と岐阜県が取得したLidarデータを用いてこの9タイプの林相とそれ以外の土地被覆に分類した50mメッシュの林相図を作成した。そして鳥類種を森林性か,この流域に分布し得るかで絞った後,種ごとに生息不適地があった場合に許容するギャップ間距離の上限を4段階(0m,50m,100m,200m)で便宜的に設定した。鳥類種の多くは密度に濃淡があっても複数の林相タイプに生息可能である。したがって鳥類種ごとに生息可能な林相タイプと生息不適地に分類した地図を作成し,また種ごとの許容するギャップ間距離の上限以内で分断されている生息可能なメッシュを連続したひとつの生息パッチとみなした。50mメッシュ(0.25ha)あたりの林相別種別個体数密度をパッチごとに合計し,小数点以下および2羽未満の個体数は切り捨て,流域内の種別個体数を推定した。様々な林相に低密度で出現し,許容するギャップ間距離が大きい希少種は過大評価になる傾向がありそうで,更なる工夫が必要と考えられた。


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