| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-064  (Poster presentation)

トキの潜在的捕食者テンの行動パターン
The behavioral patterns of Japanese marten in Sado, Japan

*江藤毅, 中津弘, 永田尚志(新大 朱鷺・自然再生)
*Takeshi ETO, Hiromu Nakatsu, Hisashi Nagata(Niigata Univ. CTER)

 佐渡島に分布するニホンテン(以下,テン)は,造林木に食害を引き起こすノウサギを駆除する目的で導入された国内外来種であり,野生トキの繁殖に影響を与える可能性があることから,環境省より「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」の重点対策外来種に指定されている.しかし,島内におけるテンの生態やトキとの関係についてはよくわかっておらず,具体的な対策は講じられていない.トキの生息密度が高く繁殖期に営巣するエリアで行った我々のこれまでの研究では,テンの行動パターンは落葉広葉樹林と果樹園の存在が影響し,繁殖期のトキとの間に関係性は認められなかった.また,人が生活するエリア内でもテンが活動していることが明らかになった(日本生態学会第65回全国大会,P2-236).調査エリア内には空き家が点在していることから,森林棲のテンが樹洞等の代替として空き家を利用することで人の生活エリアでも活動していることが予想された.そこで本研究では,空き家の敷地内に自動撮影カメラを設置して,テンの空き家の利用について調査した.その結果,撮影頻度は高くないものの,テンが床下を出入りする様子や雨どいをつたい屋根から降りる様子が確認された.また,屋根裏での繁殖も確認されており,テンが空き家を一時的な休息場所や繁殖場所として利用していることが明らかになった.さらに,敷地内に柿の木がある空き家では,テンによる放任果樹の採食が確認され,一時的に果樹を空き家に隠す貯食行動も見られた.これらの結果は,空き家が森林以外でのテンの活動エリアの拡大に貢献していることを示唆する.今後,人口減少に伴う空き家の増加により,テンの生息地はさらに拡大することが予想される.また,トキの個体数も増加することが予想されるため,両者の関係性も変わる可能性がある.そのため,テンの個体数管理の観点から空き家の管理方法を検討する必要があると考える.


日本生態学会