| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-078  (Poster presentation)

ヒメボタル集団の発光活動の定量的観察と目視観察
Quantitative observation of fireflies Luciola parvula : comparison with visual observation

*小西哲郎(中部大学)
*Tetsuro KONISHI(Chubu Univ.)

前回に引き続き、ヒメボタル(Luciola parvula)成虫集団の発光活動について、野外生息地にて定量的観察を行った結果を報告する。

ヒメボタルは日本の本州以南に生息するホタル科の昆虫である。この種は陸生で、一生を陸上で過ごす。成虫はメス=オス間で発光による交信を行って繁殖活動をする。

ヒメボタル成虫が複数個体で発光しているとき、その発光している個体数が数分から数十分スケールで変動すること、また、発光活動のピーク時刻も日によってかなり変動することが、目視観察を行う観察者の間で経験的に知られていた。発光数の変動はメス=オス間だけでなくオス=オス間に発光による相関があることを示唆しており、その実態の解明と生物学的な意味は興味深い課題である。しかしながら、従来は、成虫集団の発光活動の観察は、目視による手動計数観察に限られていた。

前回までの発表で示したように、我々は、デジタルカメラによる静止画連写と画像処理により、発光数を定量的に測定できること、また、画像ファイルが持っている時刻データも合わせて抽出することで、発光数を時系列として得ることが出来ることを示した。これは我々の知る限りヒメボタルに限らず発光生物の観察において初めてのことである。

この手法を用いて、今シーズンは、生息地である相生山緑地(名古屋市天白区)にて2夜の終夜観察を行った。各夜とも緑地内の2地点ずつからデータを得た。得られた夜明けまでの活動プロファイルは日毎に異なり、また、同一夜であっても観察地点が異なるとかなり異なるものとなった。さらに今回は、それぞれ1地点ずつにおいて、目視による手動計数観察も並行して実施した。その結果、写真による定量観察と目視による手動計数観察では、発光個体数の時系列変化の結果は定性的に一致した。このことは、我々の開発した新しい定量観察方法の正しさをある程度サポートしていると考えられる。


日本生態学会