| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-097  (Poster presentation)

上限密度林分における個体サイズおよび占有面積の分布
Distributions of individual size and occupied area in maximal density stands

*守口海(京都大学), 大澤晃(京都大学), 倉地奈保子(平岡森林研究所)
*Kai MORIGUCHI(Kyoto University), Akira Osawa(Kyoto University), Nahoko Kurachi(Hiraoka Forest Institute)

単一種・同齢群落の、様々な成長段階における最多密度状態での平均個体重と個体密度は、両対数軸上で直線になる、すなわち、両変数は冪乗関係にあることが知られている。また、林分スケールでは個体密度(平均の土地占有面積の逆数)が高いほど、競争が激しいために平均個体重が減少する、競争密度効果が知られている。上述の冪乗関係について今までに様々な説明が試みられているが、多くの場合、個体サイズが均一であることが前提され、局所的な競争も考慮されない。しかし、実際の林分では個体重と占有面積にばらつきがある。したがって、最多密度状態における個体重の分布と競争密度効果は、上述の冪乗関係を観察しうるものになっているはずである。そこで本研究では、最多密度状態にある様々な成長段階のバンクスマツ群落の、個体サイズ(D2H)の分布と、1つのアカマツ群落における個体サイズと占有面積の関係を解析した。個体重にばらつきがある場合も上述の冪乗関係を満たす、最も単純な分布の変化は、個体重の分布の形状は一定のまま、スケールのみが変化するもの(スケールフリー仮説)である。しかし、バンクスマツの個体重の分布の形状は成長とともにL字型から山型に変化していた。ワイブル分布への当てはめによって形状の変化とスケールの変化に分解すると、後者はスケールフリー仮説で予想されるものとほぼ同等であり、形状が山型に変化することは、スケールフリー仮説との乖離を広げない効果を持っていた。アカマツ群落の解析では、個体重と占有面積に弱い相関が見られた。これは1群落内の局所的な競争密度効果のモデルと見なせる。そこで、推定されたモデルの密度効果の程度(回帰モデルの傾き)を強めながら個体重をサンプルしてみると、個体重の分布はL字型に近づいた。したがって、最多密度状態において局所的な密度効果が弱いことが、上述の冪乗関係の成立に関係している可能性がある。


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