| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-098  (Poster presentation)

植物標本のゲノム情報を用いたカラマツ属の系統復元の試み
Reconstruct the phylogenetic groups of Larix based on DNA information of botanical specimens

*石塚航(北海道立総合研究機構), 新田紀敏(北海道立総合研究機構), 田畑あずさ(北海道大学), 小野清美(北海道大学), 原登志彦(北海道大学)
*Wataru ISHIZUKA(HRO), Noritoshi Nitta(HRO), Azusa Tabata(Hokkaido Univ.), Kiyomi Ono(Hokkaido Univ.), Toshihiko Hara(Hokkaido Univ.)

北方系針葉樹カラマツ属の1種群Larix gmelinii(和名;ダフリカカラマツ、チョウセンカラマツ、グイマツ)は、ユーラシア大陸極東域から朝鮮半島、およびサハリンと千島列島(色丹島、択捉島)に現在の分布が認められる。これまでの花粉分析や植物遺体調査より、最終氷期には北海道や本州北部にも本種が分布したことがわかっているが、その後の温暖期に地域絶滅し、本州では別種のニホンカラマツ(L. kaempferi)が分布するものの、北海道はカラマツ属の空白地帯となっている。しかしながら、L. gmeliniiの一部は北海道の林業用樹木として有用なことが知られており、古くより北海道へと導入が図られ、利用されてきた経緯がある。正確な来歴が残っているものはわずかであるが、導入したのは南サハリンと色丹島を由来産地とするグイマツとされ、フェノロジー(開葉、黄葉時期)や枝形態によって便宜的に由来系統が区分されてきた。そこで、先行研究において、北海道に導入された複数家系(28家系)を対象とし、葉緑体全ゲノム解読とゲノム比較、変異解析を行ったところ、種内で分化の程度が浅いものの6つの系統群が推定されること、および、系統群間でフェノロジーが完全分離しないことがわかった一方、当初考えられていたよりも多様な産地に由来している可能性が示唆された。北海道のグイマツはどこから来たのだろうか?それを紐解くため、本研究では、確かな生育地情報が付される植物標本に着目し、標本のゲノム情報から系統復元ができないか試みることとした。
北海道大学総合博物館所蔵のグイマツ標本16点(採集年;1933~2012年、採集地点;サハリン全域・色丹島)よりDNAを抽出し(溶液濃度;22~122ng/μL)、解析材料とした。系統群の識別に有効な葉緑体上のSNP変異、In/Del変異を用いて開発したマーカーでの検証、および、一般にカラマツ属で用いられる核SSRマーカーを用いた検証を試みた。発表ではその結果を報告する。


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