| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-131 (Poster presentation)
水田圃場におけるイネの成長や収量は、品種や地域によって大きく異なる。これは、気温や日射などの微気象の地域間差や、個葉から群落レベルの微気象応答性の品種間差が大きいためである。既存品種の環境応答性を詳細に解明できれば、各地域に適した品種選定や栽培法の改良、気候変動に対応可能な新品種の育成につながることが期待できる。
観測機器の進歩により、各地域における微気象は容易に測定可能となったが、バイオマスや葉面積指数(LAI)などの群落レベルの形質評価には破壊的な調査が必要であるため、これらの形質の連続的な変化の評価は困難であった。そこで本研究では、葉群を透過した近赤外光放射と光合成有効放射の比(NIR/PAR)からLAIを推定する手法(Kume et al. 2011)をイネ群落に適用し、微気象観測と組み合わせることで、連続・非破壊的なイネ群落のLAI推定法を開発することを目的とした。
2017年、名古屋大学附属東郷フィールドにおいて3種のイネ多収品種(北陸193号、収9525、中国222号)とその他2品種(日本晴・得青)の群落内で、NIR/PARを測定後、LAIも実測した。2018年は、東郷フィールドおよび長野農業試験場においてイネ2品種(北陸193号、日本晴)を栽培し、群落内でNIR/PARを、群落外でPARを、5月から10月中旬まで1分間隔で測定し続けた。定期的にLAIを実測し、微気象データとNIR/PARの測定値から、正確にLAIを反映する測定値を抽出する条件を検討した。
2017年の試験では、実測LAIとNIR/PARの間に高い相関がみられた。2018年の試験では、群落外の微気象観測と組み合わせることで、NIR/PARは晴天時の直射光入射時には変動が大きく、曇天時の散乱光入射時に安定した値を示すことが分かり、曇天時のNIR/PARの測定値を抽出することでLAIの日変化がトレース可能となった。2年間を通して得られた実測LAIとNIR/PARの間にも非常に高い相関が見られ、本手法をイネ多品種に適用可能で強力な群落成長評価ツールとして確立することができた。