| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-134  (Poster presentation)

展葉フェノロジーのサイズに応じた変化:常緑樹と落葉樹の比較
Intraspecific variation in spring leaf phenology in relation to tree size: evergreen vs deciduous species

*長田典之(名城大学)
*Noriyuki OSADA(Meijo Univ.)

温帯落葉樹林では林床の光環境は季節的に変化するため、樹木の開芽・展葉タイミングは個体の生産性に影響する主要因である。これまでに世界中の様々な温帯地域の落葉広葉樹において、同一種では高木に比べて実生や稚樹の開芽時期が早いことが示されてきた。このような変化の適応的な理由として、林冠閉鎖前に光合成を行うことで実生や稚樹の生存率・成長速度を大きくするという適応的な意義が指摘されている。ただし、樹木サイズに応じた開葉タイミングの変化パターンは線形ではなく、実生から稚樹の段階で変化が大きいものの、その後の生育段階ではあまり変化しないこともわかってきた。一方、常緑樹と落葉樹が混交する暖温帯二次林においては林床の光環境の季節的な変化は少ないと考えられる。このような森林に生育する常緑樹と落葉樹の展葉フェノロジーは、落葉広葉樹林に生育する落葉樹と同様なサイズ依存性を示すだろうか?本研究では、愛知県豊田市の暖温帯二次林に生育する常緑樹5種と落葉樹5種を対象として、2018年3〜6月にかけて毎週展葉フェノロジーを調査することにより、樹木サイズに応じた開芽タイミングの変化パターンを比較した。
 この結果、既存の研究結果と同様に、どの種もサイズに応じた変化は少ないこと、一部の種では実生から稚樹の段階で変化が大きいものの、その後の生育段階ではあまり変化しないことが明らかになった。また、常緑樹のほうが落葉樹よりもサイズに応じた変化が少ない可能性が示されたものの、アラカシのように落葉樹と同じパターンを持つ種も存在していた。さらに変化が大きい種と小さい種では樹木サイズによって開芽の順序が入れ替わることが予想された。


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