| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-135  (Poster presentation)

被陰環境下におけるイヌガシとシロダモの生理生態的特性
Ecophysiological characteristics of Neolitsea aciculata and Neolitsea sericea under shade condition

*橋木優太朗, 髙木正博(宮崎大学)
*Yutaro HASHIKI, Masahiro Takagi(Univ. of Miyazaki)

 シロダモ(Neolitsea sericea (Blume) Koidz.)とイヌガシ(Neolitsea aciculata (Blume) Koidz.)はクスノキ科シロダモ属であり暖温帯の亜高木層を構成する樹種である。高い耐陰性を持ち姿も似ている両種を、物質分配の観点から生理生態的特性の検討を行った。
 調査は宮崎県宮崎市田野町北部にある宮崎大学農学部附属演習林田野フィールドのコナラ林で行った。シロダモ13本とイヌガシ31本を、春と夏に今年新しく生えてきた枝である当年枝にマークを付けて樹高と地際直径を記録した後、樹冠上部からPixpro360を用いて全天写真の撮影をして開空度を求めた。記録した個体の一部は根元から伐採し、枝長や葉面積の測定を行った後、全乾状態にして葉、枝、幹それぞれ重さの測定を行った。
 イヌガシはシロダモよりやや被隠された環境に生育していた。また末端枝数が多く、小さい葉を多く展開する一方でシロダモは少数の大きい葉を展開していた。しかし分枝率(当年枝数/末端枝数)はシロダモのほうが多かった。当年枝のC/F(非同化器官重/同化器官重)比は、シロダモでは樹高と負の相関であったが、イヌガシでは正の相関であり、成長段階において両種の物質分配に真逆の反応を示した。これは成長して樹高が高くなる時、イヌガシでは非同化器官である枝、シロダモでは同化器官である葉への分配率を高くすることを指している。樹冠部分での当年枝において、イヌガシは樹高が高くなるほど乾重量が増加しているのに対し、シロダモに相関はなかった。樹高が250cm以上のイヌガシの場合、樹冠部分の当年枝1本あたりの乾重量はシロダモと変わらない重さになった。これらのことから両種に生存戦略の違いがあることが示唆された。


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