| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-152  (Poster presentation)

水性植物の嫌気耐性の評価:シュートの換気能力と根の酸素要求性の統合的解析
Evaluation of anaerobic tolerance in wetland plants: integrated analysis of pressurized through-flow ability in shoots and oxygen demand in roots

*中村元香(東京農業大学), 中村隆俊(東京農業大学), 土谷岳令(千葉大学)
*Motoka NAKAMURA(Tokyo Univ. of agriculture), Takatoshi NAKAMURA(Tokyo Univ. of agriculture), Takayoshi TSUCHIYA(Chiba Univ.)

嫌気土壌に生育する水生植物は、体内に通気組織を発達させ、シュートから根への酸素供給(給気)を行うことで、嫌気性有害物質から根を保護するとともに根の呼吸を維持する。こうした特徴から、これまで水生植物の嫌気耐性については、給気能力の評価が中心で、より嫌気的環境に生育する種ほど強い給気(換気機能)に依存する可能性が指摘されてきた。一方で、換気機能は、湿度や気温の影響を強くけることや、給気能力の異なる種の同所的な分布がしばしばみられことから、給気能力だけではなく、給気に応じた根の酸素消費特性も嫌気耐性に強く影響していることが予想される。しかし、これまでに、根からの酸素漏出(ROL)や呼吸特性についての報告はあるものの、これらは根の応答にのみに着目しており、シュートの給気との関連については十分に検証されていない。そこで、本研究では、シュートの酸素供給と根での酸素需要とを一連の酸素の動きとして捉え、シュートと根の応答を統合して解析することで、嫌気耐性をより詳しく評価することにした。対象として、同程度の嫌気土壌に生育し換気機能を持つアサザ属2種(アサザとガガブタ)を用い、給気能力(加圧効率、換気効率等のパラメータ、シュート基部の酸素濃度、空隙率)と、酸素要求性(呼吸速度、ROL速度)を測定し、これらの結果を統合的に考察した。
 両種はシュート基部の酸素濃度や空隙率、ROL速度に大きな違いはなかった。しかし、アサザは、ガガブタに比べ高い加圧効率を持ち、給気能力が高かった。一方、ガガブタは、給気能力は低いが、酸素濃度の低下に伴い呼吸速度を速やかに下げ、酸素濃度変化に対応した呼吸特性を示した。つまり、同様の嫌気環境に対し、シュートの給気能力を高める種と根の呼吸特性により対応する種がいることが明らかになった。このことから、水生植物の嫌気耐性は、給気能力だけでなく、酸素消費特性からの評価も重要だと考えられた。


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