| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-156  (Poster presentation)

カラマツ種子の成熟時期の標高間差の年次変動
Annual variation of seed maturity timing collected at different altitudes in Larix kaempferi

*生方正俊, 福山友博, 植田守, 高橋誠(森林総研林育セ)
*Masatoshi UBUKATA, Tomohiro Fukuyama, Mamoru Ueta, Makoto Takahashi(FTBC,FFPRI)

カラマツ( Larix kaempferi)は、東北南部から中部地方にかけての山岳域に天然分布するほか、北海道や東北地方にも広く植栽され、東北日本地域の主要造林用樹種となっている。我々は、カラマツの種子成熟に関与する環境要因を明らかにするため、北海道から山梨県にかけての各地域に植栽された個体を対象に種子の成熟時期(発芽率が急激に上昇する時期)の植栽場所や年次による変異を調査してきた。その結果、カラマツは、気温の低い地域ほど種子の成熟時期が遅れ、種子成熟までに必要な有効積算温度も低く、生育地の年平均気温と種子成熟までに必要な有効積算温度との間に有意な相関があることが明らかになった。しかしながら、植栽地間の環境の違いは気温だけでなく、緯度の違いに伴う日長等の影響や土壌等の立地条件の影響等、気温以外の様々な要因が異なり、これらがカラマツの種子成熟に影響していることも考えられる。そこで、本研究では気温以外の環境要因の違いが比較的小さいと考えられる一つの山体の同一斜面に植栽されたカラマツを対象として種子の成熟時期の調査を行った。長野県と群馬県の県境に位置する浅間山の南向き斜面の標高1,300m~2,000mに生育するカラマツ約20個体を対象に、2016年から2018年までの3年間、7月下旬から11月上旬にかけて、約10日間隔で個体別に球果を採取し、発芽率を調査した。これに加えて、標高2,000m以上に天然分布するカラマツ6個体についても同様の調査を行った。3年間とも気温が低く標高が高い場所に生育している個体ほど種子の成熟時期が遅い傾向がみられ、年次間の変動は顕著ではなかった。以上のことから、カラマツの種子成熟に気温が大きく影響していることが示唆された。本研究は生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」の支援を受けて行った。


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