| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-185  (Poster presentation)

水の多段利用を考慮したアクアポニックスに関する数理モデルの構築と収量予測
Yield forecasting by mathematical model on Aquaponics incorporating multi-stage use of water

*Shigehide IWATA(TUMSAT)

 Sustainable Development Goals(SDGs)の一つとして,飢餓をゼロにする目標がある。この目標達成のためには,安定的な食料供給が必要だが自然環境下で食料を生産する場合,生産量が変動し供給量が不安定となる。持続的な食料供給のための方法として,水産業では漁業,水産養殖が,農業では露地栽培,ハウス栽培がある。環境を人為的に調整し利用する水産養殖,ハウス栽培が安定供給には有用だが栄養塩の集積により環境負荷の問題が生じる。一方で,不安定な供給ではあるが漁業,露地栽培は環境負荷が少なく大規模に食料生産を実施できる。これらを通じて必要になるのは水の効率的な活用である。安全な水の供給はSDGsの6番目の目標にも記載されており農業,水産業でも同様である。
水産の栄養塩集積という短所の改善と水の効率的な利用のための案として,Aquaponics(Aquaculture(水産養殖)とHydroponics(水耕栽培)を合わせた造語)がある。このシステムでは,Aquacultureで流出する廃液に含まれる栄養塩をHydroponicsで活用することで高濃度の栄養塩集積を軽減することが期待される。これにより栄養塩循環のロスを少なくし環境負荷を低減することが期待されている。しかし,このシステムでは水の多段利用までは到達しておらず,大規模な生産を行うためには大規模な設備投資が必要となる。そこで,あるプロジェクトでは,低濃度塩水(沿岸域の地下水に含まれる程度の濃度)を利用して水産養殖を行い,その後廃液を液肥として,水耕栽培を実施し,栄養塩濃度・塩分濃度の低下を計り,最終的に残った水耕栽培の廃液を露地栽培に液肥として利用して活用する,ことが検討されている。
 本研究では,水産養殖,水耕栽培,露地栽培の要素を組み込んだモデルを構築し,このプロジェクトが成功するために必要な条件を解析して,提示することを目的とする。最終的には,最適な水産養殖,水耕栽培,露地栽培で生産する資源量と効率的に生産するための条件を提示する予定である。


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