| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-222  (Poster presentation)

イノシシ密度指標としての痕跡・捕獲データの有効性―自動撮影カメラによる比較検討―
Effectiveness of activity signs and hunting bags as abundance indices of Wild boar: A comparison study with infrared-triggered camera

*東出大志(兵庫県立大学), 栗山武夫(兵庫県立大学), 高木俊(兵庫県立大学), 中島啓裕(日本大学), 深澤圭太(国立環境研究所), 横山真弓(兵庫県立大学)
*Daishi HIGASHIDE(University of Hyogo), Takeo Kuriyama(University of Hyogo), Shun Takagi(University of Hyogo), Yoshihiro Nakashima(Nihon Univ.), Keita Fukasawa(NIES), Mayumi Yokoyama(University of Hyogo)

科学的根拠に基づく大型哺乳類の管理を実現するためには,対象種の生息密度(個体数)や生息状況のモニタリングが重要である.現在,全国的な個体数の動向把握には捕獲効率(CPUE)や銃猟目撃効率(SPUE)、捕獲数が密度指標として利用されているが,その時空間的な指標性についての検討は不十分である.また,これらの捕獲による指標は行為に付随するバイアスが問題となることが多く,独立した指標が必要である.シカでは痕跡情報(糞)が捕獲によらない有用な密度指標として確立されているが,イノシシでは確立されていないため,広域的な生息密度の把握が難しい.そこで本研究では,イノシシ密度指標としての痕跡データと狩猟捕獲データの有効性(特に空間的指標性)を検討するため,自動撮影カメラの撮影データからRESTモデル(Nakashima et al. 2018)により推定した生息密度との比較を行った.
自動撮影カメラは2017年9月から2018年1月に兵庫県16地域と千葉県7地域において約1ヶ月間設置し,同一地域で2017年10月~12月にイノシシの痕跡(掘り返し・擦り跡・糞塊)調査を実施した.各痕跡数を目的変数,RESTモデルによるイノシシ推定生息密度の中央値を説明変数,痕跡調査距離をオフセット項とし,負の二項分布を仮定した一般化線形モデルを用いてべき乗回帰を行った.双方の調査時期に対応のある13地域のデータを用いた解析において,掘り返し密度に対する推定生息密度の有意な正の効果が検出され,モデル予測値と実測値の間にも強い正の相関が認められた.地域差や季節差など検討すべき課題もあるが,掘り返しはイノシシの生息密度指標となりえる可能性がある.また,兵庫県における2017年度猟期中のSPUE,箱罠CPUE,くくり罠CPUEを用いた検討では,くくり罠CPUEに対して推定生息密度の有意な正の効果が検出され,予測値と実測値の間にも強い正の相関が認められたことから,捕獲データとしてはくくり罠CPUEが有効であると考えられた.


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