| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-225  (Poster presentation)

無農薬茶園における畝間の植生が害虫・捕食性天敵の発生に及ぼす影響
Influence of furrow vegetation on appearances of pests and predators in organic tea plantation

*田所賢弥, 三井裕樹(東京農業大学)
*Kenya TADOKORO, Yuki Mitsui(TUA)

 茶の栽培において、病害虫対策に伴う問題点を軽減するため、農薬に偏重しない総合的病害虫管理 (IPM)が必要である。また、茶畑の生態系は主に茶樹と畝間の環境、またそこに生息する生物から構成されることから、畝間の植生や環境がそれらの種構成、あるいは発生消長を変化させる要因になりえる。茶の主要な土着性天敵としてはクモ類が挙げられる他、ダニ類に対しては捕食性のダニ類が主な天敵であると考えられる。そのため本研究では茶園の畝間に異なる管理を施し、主要害虫と捕食性天敵の発生消長を比較することで、畝間の管理の違いがそれらに及ぼす効果を検証する。
 東京農業大学茶園において畝間の管理方法が異なる約240m2 の区画を4つ設置した (非除草区、刈草敷き区、除草剤区、農薬・除草剤区)。各区中心部3畝3mずつの範囲で5月~11月の各月2回、叩き落とし法とクモ類の巣数調査を行った。
 非除草区において、多くの害虫の個体数が他区より多く、主要害虫の発生消長も多い傾向にあった。また、畝間に雑草が繁茂し、管理あるいは収穫に不適であり管理方法として有効ではないと言える。刈草敷きによる管理は、定期的な除草が必要であるが、刈った草をそのまま敷き込むことができ、捕食性天敵の増加にも効果があったことから、有効な管理方法であると言える。除草剤区において、皿網型のクモ類のピーク時の巣数が他区の数倍あり、チャノミドリヒメヨコバイの発生ピーク時の発生数が抑えられる傾向にあったことから、捕食性天敵、特に造網性のクモ類の営巣空間増加とそれに伴う害虫の発生抑制に一定の効果があると考えられる。農薬・除草剤区はダニ類(害虫および捕食性)の個体数が少ない傾向にあった。しかし農薬や除草剤による管理は効率的であるが、薬剤の費用や散布の労力を要し、土壌や周辺環境、捕食性天敵への影響も懸念される。
 以上のことから、環境に配慮した管理方法として刈り草敷きが有効であると考えられる。


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