| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-281  (Poster presentation)

MIG-seqとマルチDNAバーコーディングによるNGSベースの種・品種識別
NGS-based procedure for species/varieties identification using MIG-seq and multiplexed DNA barcoding

*松尾歩(東北大・農), 廣田峻(東北大・農), 綱本良啓(森林総研・東北), 満行知花(九州大・理), 岡野邦宏(秋田県立大・環境), 陶山佳久(東北大・農)
*Ayumi MATSUO(Tohoku Univ.), Shun K Hirota(Tohoku Univ.), Yoshihiro Tsunamoto(FFRPI), Chika Mitsuyuki(Kyushu Univ.), Kunihiro Okano(Akita Pref. Univ.), Yoshihisa Suyama(Tohoku Univ.)

 MIG-seq法は、次世代シーケンサー(NGS)を用いたPCRベースのゲノムワイド配列分析手法である(Suyama & Matsuki 2015)。講演者らが実施している標準的な方法では、1度のランで数百サンプルを対象として数百〜数千SNPを検出して解析することが可能であり、既に多くの分類群を対象に系統地理学的・集団遺伝学的な解析が行われてきた。しかし、MIG-seqで得られるSNPには種あるいは集団ごとに特異的なものも多いため、対象とするサンプル間の遺伝的分化が大きい場合(科・属間レベルの解析)には、共有性のあるSNPの数が限られ、種の分子系統的位置づけを十分に把握することが困難な場合もあった。一方で、従来のサンガー・シーケンシングによるDNAバーコーディング法は、属レベルの同定には有効性が高いが、植物の分類群によっては種レベルの同定が困難なことも多い。加えて、解読対象配列にヘテロ接合がある場合には、配列情報を取得することが難しいという問題点がある。そこで本研究では、NGSベースの効果的な種・品種識別法の確立を目指し、1)1本鎖の配列情報を取得できるNGSの利点を活かし、同時に複数領域の配列情報を読み取ることで簡便に種識別情報を取得する「マルチDNAバーコーディング法」を開発するとともに、2)MIG-seq法の分析性能をより高めることで、品種レベルの識別に特化させた手法開発を行った。
 本発表では、上記開発手法の適用例として、東南アジア熱帯林に分布する植物サンプルを対象に行ったマルチDNAバーコーディング(ITS、rbcL、trnH-psbA、trnL)の結果を詳しい手法とともに紹介する。また、品種識別の適用例として、シイタケ(Lentinula edodes)を対象に行った改良MIG-seq法による解析実例を紹介する。これまでの成果では、マルチDNAバーコーディング法(おおまかな識別)とMIG-seq法(詳細な識別)を併用することで、さまざまな分化レベルの種・品種を対象に迅速・簡便・効果的な識別が可能であることが示された。


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