| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-369  (Poster presentation)

キビナゴの口腔内から発見されたウオノギンカ属(ウオノエ科)幼体とその分子同定
Molecular identification of aegathoid of Anilocra sp. (Cymothoidae) detected in the mouth cavity of Spratelloides gracilis

*馬場孝(大安研・微生物)
*Takashi BABA(OIPH)

ウオノエ科等脚類(以下ウオノエ類)は、魚類の体表・口腔内・鰓腔内・腹腔内に寄生する甲殻類である。魚の調理中にウオノエ類が発見され、苦情の対象となることもある。2017年12月に大阪府内で購入されたキビナゴ55尾のうち1尾の口腔内からウオノエ類が発見された。口腔内に寄生するウオノエ類は通常宿主と同一方向を向いて寄生しているが、この個体は、宿主と反対の方向を向いていた。形態的特徴からウオノギンカ属の幼体と考えられた。これまでの研究から、ウオノギンカ属の幼体は、キビナゴ、カタクチイワシ、コノシロ、ニセタカサゴ、ハタンポ属の体表から発見されているが、口腔内からは発見されておらず、寄生部位として見過ごされてきた可能性がある。さらにこれらは幼体であるため、種を特定できていない。本研究では、このウオノギンカ属幼体の分子同定を行うとともに、口腔内における寄生状況を調べることを目的とした。
 この個体の一部からDNAを抽出し、mtDNACOI領域の部分塩基配列を解読した。相同性検索の結果、本個体の塩基配列(712塩基対)は、ニザダイノギンカと99%一致し、サッパノギンカとは89%しか一致しなかった。従って、本個体はニザダイノギンカの幼体であると考えられた。
 次に2018年10月から2019年2月にかけて、合計547尾のキビナゴの口腔内におけるニザダイノギンカ幼体の寄生状況を調べた。その結果、本種は発見されなかった。
 以上のことから、ニザダイノギンカ幼体は、キビナゴの口腔内を寄生部位には通常利用せず、ここから発見されることは非常に稀であることが推察された。宿主と異なる方向を向いていたことから、宿主から離れた幼体が、捕食か偶然によりキビナゴの口腔内に位置し、寄生していたように見えたと推測された。


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