| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-401  (Poster presentation)

白山山麓のブナ成熟林における土壌有機炭素の蓄積速度の推定
Estimating of soil carbon accumulation rate in an old-growth beech-oak forest in central Japan.

*近藤美由紀(国立環境研究所), 飯村康夫(滋賀県立大学), 吉竹晋平(岐阜大学), 藤嶽暢英(神戸大学), 大塚俊之(岐阜大学)
*Miyuki KONDO(NIES), Yasuo IIMURA(Univ. Shiga Pref.), Shinpei YOSHITAKE(Gifu Univ.), Nobuhide FUJITAKE(Kobe Univ.), Toshiyuki OHTSUKA(Gifu Univ.)

樹齢が100年を超える成熟林では、森林による炭素吸収と呼吸による放出が拮抗し、森林全体としての炭素吸収量はゼロとされてきた。一方で、土壌形成はより長い時間スケールで進むため、森林バイオマスが定常状態に達し、炭素吸収能が平衡であると想定される成熟林においても、土壌への炭素蓄積は継続しており、炭素循環におけるその役割は無視できない。本研究では、白山山麓に位置する冷温帯の成熟林ブナ林おける土壌有機炭素の蓄積速度を求めるために、土壌の炭素含有率、炭素同位体(13C、14C)分析を実施した。本調査地の土壌では、深さ25-54cmにテフラの堆積が確認された。表層からテフラが堆積する層に向かって深度方向に、土壌の炭素含有率は減少し(9.8%から2.4%)を、炭素安定同位体比は高くなる(-26.3‰から-24.8‰)傾向を示した。一方、テフラが堆積する層の直下では、炭素含有率は7.0%とテフラ層直上よりも高い値を示し、炭素安定同位体比は-25.3‰と低い値を示した。テフラの堆積する層の上層および下層土壌の14C分析の結果から、テフラは白山の噴火として最も新しい1659年の火山性の堆積物と想定された。これらの土壌分析の結果から、表層0-25cmを火山噴火後の過去352年間に形成された土壌と仮定して、土壌有機炭素の蓄積量とその速度を求めた。仮比重および炭素含有率の結果から、表層25cmまでに5.1 kg C/ m2の土壌炭素が蓄積し、その約半分が深さ0-5cmに蓄積していた。先行研究による2012年の植物バイオマス量と比較すると、その約1割に相当する炭素が土壌に蓄積しており、平均堆積速度は14.6 g C/m2/yrと推定された。


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