| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-440  (Poster presentation)

国立公園の保全有効性評価: 複合的な脅威の下での管理を考える
Conservation effectiveness of Japanese national parks: toward management under multiple threats

*赤坂宗光(農工大), 石濱史子(国環研), 藤田卓(日本自然保護協会), 角谷拓(国環研)
*Munemitsu AKASAKA(TUAT), Fumiko Ishihama(NIES), Taku Fujita(NACS-J), Taku Kadoya(NIES)

自然保護区(保護区)は効果的に管理されることで生物多様性保全の要となる。「保護区は生物多様性の保全に対して有効か」という問いに答えるため、全球・国スケールでの保護区の管理の保全に対する有効性の評価(保全有効性評価)は盛んに実施されてきた。広く認識されていないものの、保全有効性評価は保全に対する貢献の現状を評価するだけでなく、将来的に有効な管理を実施するための判断材料を提示できる可能性を持つ。管理の対象となる脅威要因は開発、汚染、盗掘など多岐にわたり、対策方法も異なるが、これまでの評価は各保護区に存在する脅威の総体に対して実施されてきたことから、管理者へ優先的に対処すべき脅威などの管理計画策定に活用可能な情報の提供は難しい。本研究では、国内の絶滅危惧維管束植物1037種の存続に対する国立公園の有効性の評価を、主要な8つの脅威ごとに行った。この際、有効性は脅威への晒されやすさ(脅威の暴露)と、脅威に晒された場合の強度(脅威の強度)のそれぞれの低減という二つの観点から評価した。全体として、約15年間(1994,1995-2010,2011年)の局所絶滅率は国立公園外よりも、国立公園内で低かった。国立公園は、絶滅危惧植物が開発や汚染に晒される確率を低減させていたが、残りの6つの脅威への晒されやすさを低減させる効果はみられなかった。国立公園は、複数の脅威の強度を低減していたものの、有意な傾向は3つの脅威でのみ見られた。これらの結果は、有効性評価の際に、個々の保全対象が晒されている脅威についての情報を活用することで、保護区の管理者により有用な情報が提供できることを示唆する。


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