| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-457  (Poster presentation)

レッドリスト種の水鳥、カエル類、植物が出現する水田の特徴 【B】
Red List species of water birds, frogs and plants occurred in rice paddy fields of Japan 【B】

*池田浩明(農業環境変動研究セ)
*Hiroaki IKEDA(NIAES)

昨年の札幌大会において、企画集会「環境保全型農業で水田景観の生物多様性を守ることができるのか?」を開催し、水田の生物多様性の簡易評価手法について紹介した。この手法では、地域ごとに指定された指標生物(3分類群)の個体数または種数をスコア化して評価するが、環境省または都道府県のレッドリストにおける準絶滅危惧種以上の水鳥、絶滅危惧種のカエル類・植物(本田・畦畔)を加点できることとした。今回は、これらの分類群の絶滅危惧種(環境省または都道府県)が出現する水田の特徴について報告する。
全国6地域で水田(77グリッド、671圃場)を2014-2015年に調査(水鳥はグリッドごとに半径100mまたは200mのポイントセンサス、カエル類は畦畔20mの見取り調査、植物は田面・畦畔での1m2(田面・畦畔ごとにN=3)のコドラート調査)した結果、絶滅危惧種は水鳥でコウノトリなどの4種、カエル類でナゴヤダルマガエルなどの4種、植物でシャジクモなどの11種(田面5種、畦畔6種)が出現した。これら絶滅危惧種の出現率は、水鳥で出現数が少なく傾向が不明瞭だったが、カエル類と植物では有機栽培圃場が最も高かった。したがって、減農薬・無農薬栽培の取り組みは、カエル類と植物の絶滅危惧種の保全に貢献することが示唆された。地域としては、愛知・滋賀県で最も高頻度に出現し、福岡県で最も出現しなかった。福岡県の水田は、圃場整備が施されたうえ、田植えの時期が遅いため、土壌が乾いている期間が最も長い。したがって、水鳥、カエル類、植物の絶滅危惧種の出現には、このような水管理も影響することが示唆された。
なお、本研究は農林水産省委託プロジェクト研究「生物多様性を活用した安定的農業生産技術の開発」の成果である。


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