| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-33  (Poster presentation)

南関東におけるヒガシシマドジョウの遺伝的多様性
Gene diversity of Cobitis sp. BIWAE typeC in south Kanto region

*三内悠吾, 上野拓翔, 横溝健(海城中学高等学校)
*Yugo Miuchi, Takuto Ueno, Ken Yokomizo(Kaijo high school)

 シマドジョウ種群Cobitis biwae species complexは,尾鰭の弧状横帯や尾鰭基部の黒色斑,躯幹部の斑紋の特徴から種判別ができるとされている.東日本にはヒガシシマドジョウC. sp. BIWAE typeCが分布しており,本種は尾鰭の弧状横帯が4-6本,尾鰭基部の黒色斑は眼径より小さい等の特徴が報告されている(中島ほか,2012).しかし,多摩川水系秋川をはじめとする南関東の集団について斑紋を記録したところ,これらの特徴に該当しない個体が記録され,地点によっては斑紋が多様であることや,水系ごとの斑紋の差異が確認された.さらにmtDNAのCytb領域のPCR 法及びPCR‐RFLP法での種判別と赤血球長径の計測による倍数性の判別の結果,これらは全てヒガシシマドジョウであると判別された.そこで本研究は,南関東におけるシマドジョウ種群のCytb領域の塩基配列データを新たに解析することにより,遺伝的集団構造,移入の有無,遺伝的多様度と斑紋の多様度の関連性を明らかにすることを目的としている.
 調査地点は,多様な斑紋の変異が見られるJR武蔵五日市駅周辺の多摩川水系秋川を中心に,荒川水系,相模川水系など南関東の7水系17地点での採捕を行った.捕獲個体は斑紋等を写真に撮って記録し,DNA分析試料として鰭の一部を切除した.DNA抽出後,mtDNAのCytb領域についてPCR法による増幅を行い,Applied Biosystems 3730xl DNA Analyzerによるシーケンス反応を行った.得られた配列はMEGA7とDnaSPを用いた解析を行った.
 秋川,高麗川,帷子川といった一部の調査地点の集団からは,尾鰭の弧状横帯が太く2-3本である個体や尾鰭基底部の黒色斑が眼径より大きい個体など,尾鰭や躯幹部の斑紋の変異個体が多く記録された.また,酒匂川,川音川の集団は,躯幹部斑紋L3及びL4に他水系のものと識別可能な差異がみられた.一方,Cytb領域のハプロタイプ多様度を比較した結果,斑紋の多様さとの関係性は低い可能性が考えられた.


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