| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S01-4  (Presentation in Symposium)

空間・時間傾度に伴う陸生菌類の群集集合
Community assembly of terrestrial fungi along spatial and temporal gradients

*松岡俊将(兵庫県大・院・シミュ)
*Shunsuke Matsuoka(Univ. Hyogo)

菌類は、分散能力が高く環境の変化に迅速に応答するため、群集組成の空間的・時間的な変動は、環境変数(宿主生物や非生物環境)の空間的・時間的な変動に応じて生じると解釈されてきた。一方近年、動植物と同様に、菌類においても分散制限や先住効果が存在する証拠が示されてきた。これは、菌類群集組成は周囲の群集あるいは過去の群集の影響により、環境によらず空間的・時間的な距離が近い場所ほど群集が似る場合があることを意味する。
私は、樹木の共生菌類である外生菌根菌を対象として、標高や緯度傾度に沿ったサンプリングや同一調査地での繰り返しサンプリングを行うことによって、群集組成の空間・時間変動パターンと環境変数や空間・時間距離の関係を調査してきた。その結果、外生菌根菌群集の空間・時間変動は、環境変数のみならず、群集間の空間的・時間的距離によっても説明されることが明らかになった。これらの結果は、外生菌根菌群集は、必ずしもその時・その場所の環境に迅速に応答しているわけではなく、過去の定着や移動分散の履歴も部分的に反映している可能性を示している。
こうした菌類の野外群集研究は今後増加し、群集パターンとその成立要因への理解が進んでいくと予想される。一方、菌類群集研究で得られた知見を、動植物群集を中心に発展してきた群集生態学のどこにどのように位置づけ、整理していくのかが今後の課題の1つといえる。そこで本講演では最後に、これまでの群集生態学研究で培われた理論やモデル、実験・観察結果について、生物群や系を問わず一般的に適用可能な形で体系的に整理するために、4つのプロセス(選択、浮動、分散、種分化)に着目するというアイデア(Vellend 2016)を紹介する。


日本生態学会