| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S02-1  (Presentation in Symposium)

Within-host ecologyの世界
Within-host ecology world

*岩見真吾(九州大学)
*Shingo Iwami(Kyushu University)

生態学(Ecology)とは、生物と環境の間の相互作用を扱う学問分野である。また、生態学で扱う対象は生物体、個体群、群集、生態系や生物圏など様々である。wikipediaで“生態学”を検索してみると、個体群生態学、群集生態学、進化生態学…など、実に34個にもおよぶ関係分野が記載されている。しかし、これら多種多様な“生態学”の多くは、野外のマクロな生物に焦点が当てられている。「生物と環境の間の相互作用を扱う学問分野」が生態学の定義であれば、生体内のミクロな生物とそれらを取り巻く環境との相互作用(生体内の生態学:within-host ecology)にも焦点が当てられても良いはずである。実際、長い歴史のある生態学領域で育まれてきた理論は、様々な学問と相互に作用することで影響を与え合いながら発展してきた。例えば、個体群生態学はベイズ推定と融合を果たす事で、経時的なデータから定量的な情報を抽出し、ウイルスダイナミクスの分野を爆発的に加速させた。また、近年では、次世代シーケンサーの登場により、ゲノムデータを大規模に読めるようになった事で、生体内におけるがんや病原体の進化動態が詳細に理解されるようになってきた。容易にハイスループットデータを取得できるようになった現在、within-host ecologyがデータリッチな環境で活発に研究される段階に差し掛かりつつある。一方で、within-host ecologyで新たに得られる概念は、ひるがえって個体群生態学などの生態学分野にさらなる発展をもたらすと期待できる。本講演では「Within-host ecology ? - がんの多様性から森林の多様性まで -」というシンポジウムのオーバービューを発表する。


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