| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S08-1  (Presentation in Symposium)

人獣共通感染症の”今“について考える
Cutting edges of Japanese Zoonoses

*岡部貴美子, 亘悠哉, 飯島勇人, 古川拓哉(森林総合研究所)
*Kimiko Okabe, Yuya Watari, Hayato Iijima, Takuya Furukawa(FFPRI)

岡部貴美子・亘悠哉・飯島勇人・古川拓哉(森林総研)

新興感染症の少なくとも75%は、人獣共通感染症と考えられる。私たちの身の回りでもこのような人獣共通感染症の脅威が拡大していると言われるが、その要因として、野生動物生息地の分断や劣化、放牧地等の拡大、都市化、伴侶動物の増加などが指摘されている。一方日本では、シカなどによる農作物や林業への被害が深刻化しており、有害鳥獣駆除対策が進められているものの今のところこの対策には、人獣共通感染症リスク低減の視点は含まれていない。人獣共通感染症対策として、世界的に人―動物―病原体を総合的に見据え、統合的な解決を目指す“ワンヘルス”のアプローチが進められている。日本でも獣医学の専門家を中心にこのアプローチが推進されてきたが、予防医学的なアプローチと生態系管理の視点が不足していると感じられる。この問題に対する生態学的アプローチを進めてゆくためには、野生動物にはどのような感染症リスクがあるのか、また飼育動物はどのように関与するかについての知見を深め、現在の有害鳥獣対策の有効性と感染症対策として加えるべき観点について、明らかにする必要がある。


日本生態学会