| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S16-1  (Presentation in Symposium)

行政施策から得られるデータでどこまで個体数推定は可能か?
Estimation of sika deer population by the data obtained from population management practices at local government

*高木俊, 栗山武夫, 東出大志, 横山真弓(兵庫県立大学)
*Shun Takagi, Takeo Kuriyama, Daishi Higashide, Mayumi Yokoyama(University of Hyogo)

管理計画(以下特定計画)の策定が進められ、科学的なデータに基づく野生動物管理が実施されている。特定計画では、生息動向や被害のモニタリングに基づき管理目標を設定し、個体数調整等の管理を実施した後、対策の評価とフィードバックを行う順応的管理の考えを基本としている。シカ・イノシシでは2013年に個体数半減目標が設定されたことなどから、鳥獣行政の現場では捕獲強化が進んでいるが、捕獲目標の根拠となる生息個体数の推定には多くの不確実性が含まれる。個体数推定や生息状況の把握には、時間的・空間的な密度指標のモニタリングが重要であり、行政施策の中で収集されるデータが密度の時空間的変動の情報をどの程度含んでいるかの検討が必要である。
本公演では、兵庫県のシカ管理を事例として、捕獲頭数、糞塊密度、SPUE(単位努力量あたり目撃数)、CPUE(単位努力量あたり捕獲数)といったモニタリングデータを用いて行った、状態空間モデル(Harvest-based Estimation)による個体数推定を紹介する。新たに検討した市町単位での推定結果からは生息状況や捕獲状況には大きな市町間格差があり、対策の評価や改善には空間解像度の高い推定の必要性が示された。また、密度指標として収集されるデータには、観測誤差や収集過程でのバイアスなど指標としての課題も明らかになった。都道府県や市町村の捕獲事業を通じて収集されるデータの量は今後も増加することが見込まれるが、管理に有効にフィードバックさせるためにはどのようにデータの質を高めるかを議論したい。


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