| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W02-4  (Workshop)

魚はなぜ潜る?餌と適温のミスマッチが起こす魚の行動
Why do fish dive? Behavior of fish caused by a mismatch between food and temperature

*中村乙水(長崎大・海洋センター)
*Itsumi Nakamura(ECSER, Nagasaki Univ.)

温度は、代謝や成長など様々な生命現象に影響する要因である。生物の多くは体温調節を外界の熱源に依存する外温性であり、それぞれ適した温度環境を選択して体温を好適な状態に調節しながら生活しているが、熱伝導率の大きい水中に生息する生物では、外部温度の体温への影響が特に大きい。海洋は深度とともに大きく物理環境が変化し、とりわけ水温躍層付近では数十メートル浅深移動するだけでも水温が数℃以上異なるという特徴を持つ。そのため、同じ海域であっても深度帯によって生息する生物は全く異なる。ところが、近年の行動追跡の結果から、大きな魚が水温躍層を越えて移動していることが明らかになってきた。身体が大きい生物は熱容量が大きく、外温性であっても適温範囲外の環境下でしばらく好適な体温を維持することができる。そのため、大きな魚は水温躍層を越えて移動してしばらくそこに留まることができ、体温が適温範囲外になる前に好適な温度環境に戻れば体温を回復できる。つまり、水温躍層を越えて行き来することで体温を好適な範囲に保ちながら、適温範囲外に存在する餌資源も利用する事ができると考えられる。本発表では、そのような適温範囲外にある餌資源を利用する魚として、餌を食べるために潜るマンボウと身体を冷やすために潜るジンベエザメの研究例を紹介する。また、様々な大きさの個体や海洋構造の異なる季節にデータが得られたマンボウでは体温調節機構と採餌戦略についても考察する。


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