| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W06-4  (Workshop)

アライグマの生息適地予測と密度の代替指標としてのフィールドサインの検討
Habitat suitability prediction of raccoons and examination of animal tracks as the proxy index of the density

*廣瀬未来(東邦大学)
*Miki Hirose(Toho Univ.)

 生態系の上位に位置するアライグマは1個体でも大きな捕食圧を与えるため、たとえ低密度地域であっても在来生態系への影響は大きい。そのため、生態系被害の低減には、低密度地域においてもアライグマを効率的に捕獲することが必要である。低密度地域では捕獲効率が低くなるため、①対象地域での分布・密度の把握、②局所的な生息利用地の推定、③罠の設置という3つの段階を踏まえた捕獲対策が効果的であると考えられる。そこで本発表では、分布・密度の把握の際に足跡と爪痕が利用可能かと、GPSトラッキングデータを用いた局所的な生息利用地の推定を紹介する。本研究で対象地とした千葉県は、1990年代に野外での個体目撃情報が複数あり、1996年代に房総半島南東部(御宿町)で初めて自然繁殖が確認されて以降、全県へと分布が拡大していった。調査はアライグマが低密度で生息すると考えられる千葉県南部で行った。アライグマの足跡は水田地域でその有無を、爪痕はその周囲の社寺においてカウント調査を行い、説明変数にアライグマの捕獲効率(単位罠日当たりの捕獲数 : CPUE)と環境要因を組み込んだ一般化線形モデル(GLM)で有用な密度指標かの検討をそれぞれ行った。解析の結果、足跡の有無は環境要因が影響していること、爪痕の量はCPUEが正に影響していることが示された。アライグマの利用適地は千葉県南部におけるGPSトラッキングデータを基にしたMaxEntで解析を行った。その結果、水田や森林での利用確率が高かったが、標高の高い地域や市街では利用確率が低かった。GPSデータと合わせて考えると、水田を採餌や移動に、森林を休息場として利用している可能性を示唆した。上記2つの解析結果から、まず爪痕調査による分布・密度の把握をした後、その地域内で利用適地確率が高い場所に罠を設置することが低密度地域でも効率な捕獲戦略であると言える。


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