| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W19-3  (Workshop)

スパース推定で生態学のビッグデータに挑む
Challenging to analyze ecological big data using sparse estimation

*大庭ゆりか(京都大学), YeFeng(国立環境研究所), 亀山哲(国立環境研究所), 伊勢武史(京都大学)
*Yurika Oba(Kyoto Univ.), Feng Ye(Nat. Inst. Environ. Studies), Satoshi Kameyama(Nat. Inst. Environ. Studies), Takeshi Ise(Kyoto Univ.)

本発表では、陸域環境と海域環境のつながりについて、ビッグデータを用いて解析した企画者の研究について紹介する。
 植生や土地利用、社会経済活動で表される陸域環境と、生物多様性や基礎生産、資源量のような海域環境は、河川を通してつながっており、そのため、そこには何らかの相互作用が存在すると考えられてきた。しかし、対象とする地域が広範囲であり、考えられ得る説明変数が膨大であるため、従来用いられてきた生態学の統計的手法では、普遍的な関係性の解明までたどり着くことが難しかった。そこで本研究では、このような規模の大きな環境に潜む関係性の定量的な解明を目的として、データ駆動型の観点から膨大な説明変数の解析を行った。今回は日本政府の統計データベースより、47都道府県にまつわる地質学的、生物学的、社会学的な448個の説明変数と、68種の水産物の漁獲量を目的変数として設定し、解析手法としてスパースモデリングを用いた。解析の結果、まぐろやバショウカジキのような沖合の海産物より、沿岸の海藻や貝のような固着性の海産物で多くの説明変数が抽出された。また、サケ類では、抽出された説明変数の数が県単位で明確に異なった。これは、サケ類が成長段階にあわせて淡水と海水を行き来する生活史を持つことから、他の海洋性の種よりも陸上の説明変数との関係性が強いためだと推測される。このように、スパースモデリングは「陸域環境と海域環境のつながり」ような、規模が大きく複雑なシステムを説明するのに効果的な手法である可能性が示唆された。


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