| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W29-5  (Workshop)

植物社会学的な群落単位を用いた現存植生図凡例の現況と課題-調整の立場から-
The current status and issues of the legend using phytosociological unit for Actual Vegetation Map of Ministry of the Environment

*成ケ沢久仁子(アジア航測(株))
*Kuniko Narigasawa(Asia Air Survey Co.,Ltd)

環境省が第6回・第7回自然環境保全基礎調査(1999~)で整備している縮尺1/25,000の現存植生図は,2019年度末で全国整備率が88.4%を超える見込みで,残り数年程度で整備完了の目途がたつようになった.1/25,000植生図の凡例は,大・中・細の3段階の区分が設定され,現地調査により宮脇ほか(1994)等の群集等が用いられている.植物社会学的な凡例は,細区分の群集240,中区分の群団22,オーダー1,クラス4の計266凡例で,凡例数の約30%を占める.凡例の基本単位は群集とされたが,植生図での適用状況をみると,作成年度の違いにより図幅間での群集名の不整合や,優占種群落と群集との凡例名不一致が生じている箇所もあり,凡例が統一された図とはなっていない.また,既存文献の群集記載と分布範囲が一致しない群集もある.既存文献に記載された群集名がそのままで植生図に適用できない理由として植物社会学の専門家以外から次のような意見がある.1)群集標徴種が地域に分布しない.調査データに既存文献で報告された群集標徴種や区分種が出現しない.2)一方,既存の群集の地理的区分が確定していず,群集同定が難しい場合がある.3)局所的なものを含めて優占種群落が直観的にわかりやすいとして群集同定を行わないこともある.これらの植物社会学のわかりにくさを指摘する意見と,既存の群集を主とする群落区分を結びつけるために,現在取り組まれている全国の包括的な群落体系の整理,群集のみかたに対する基本的な理解を助けるテキストの作成,現地のアウフナーメとの比較に用いる文献の組成表の電子化等が望まれる。植生図の植物社会学的凡例の現況と課題を示し,業務で可能な解決策を検討したい.※本検討は弊社が受託した環境省生物多様性センター「平成30年度植生調査植生図精度管理委託業務」の凡例検討部会及び植生図更新検討会の検討をもとにした.


日本生態学会