| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-06  (Oral presentation)

アマモ場の小型無脊椎動物に対する捕食圧
Predation pressure on macroinvertebrates in eelgrass beds

*百田恭輔, 細川真也, 小室隆, 大倉翔太, 井上徹教, 椎葉直子(港湾空港技術研究所)
*Kyosuke MOMOTA, Shinya HOSOKAWA, Takashi KOMURO, Shota OKURA, Tetsunori INOUE, Naoko SHIIBA(Port and Airport Res. Inst.)

 アマモ場にはヨコエビ類や巻貝といった小型無脊椎動物が生息しており,それらは様々な役割を通じてアマモ場の生態系を支えていることが知られている.その重要な役割の一つとして,魚類やエビ・カニ類などの高次の生物の「餌」となることによりアマモ場の餌場・生育場としての機能を維持することが挙げられる.限られた対象についてではあるものの餌としての利用されやすさ(捕食圧)は種や分類群の違いによって異なることが徐々に明らかにされてきており,ボトムアップ的視点から見た場合,形成される餌生物群集の違いによってアマモ場の餌場・生育場としての機能性(価値)も潜在的に異なることが考えられる.しかし,既往研究ではアマモ場の物理的構造(パッチ構造など)の違いと捕食圧の関係が話題の中心となってきた一方で,餌生物の特性と捕食圧の関係についてはあまり対象とされてこなかった.捕食圧が異なる理由を具体的に把握できれば,餌生物群集を調べることによりアマモ場の餌場・生育場としての機能性(価値)をより正確に推定することが可能になると考えられる.本講演では,北海道東部厚岸湾・神奈川県久里浜湾・山口県大島干潟のアマモ場における複数種の小型無脊椎動物を用いた捕食圧評価実験の結果をもとに,小型無脊椎動物群集の変異がアマモ場の餌場・生育場としての機能に与える影響について論考した内容を紹介する.種や分類群を超えた要因を探るために,小型無脊椎動物が有する捕食者に対する逃避・防衛に関連する生態的機能が介する効果に着目した.


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