| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-13  (Oral presentation)

芦生研究林におけるエコツアーガイドとの協働による生物多様性モニタリング
Biodiversity monitoring in collaboration with eco-tour guides in Ashu forest research station.

*赤石大輔, 法理樹里, 徳地直子(京都大学)
*Daisuke AKAISHI, Juri HORI, Naoko TOKUCHI(Kyoto Univ.)

京都大学芦生研究林は多様な動植物が確認される生物多様性保全上重要な地域であるが、近年はシカの食害による植生の衰退等が問題となっている。研究林では古くからきのこ類の調査も実施されており1967年の論文に283種類が記録されている。その後もいくつかの研究で研究林のきのこ類が記録されているが十分に整理されておらず、また近年作られた新分類体系での整理もされていない。それらの断片的な資料を統合・整理し、多くの市民や研究者に参照できる状態にする必要がある。
 研究林は大学の施設ながら、90年代以降プロのガイドが案内する有料エコツアーが実施されており、ツアーには年間3000人程が訪れる国内では希有な研究施設である。ガイドは芦生研究林内の貴重な自然環境を案内するため、動植物等の知識を身に付けている。ガイドを対象としたアンケート調査を実施した結果、ガイドの質向上に向けて、研究者からの情報提供や、研究者との連携による新しい知識の獲得等を求めていることが把握できた。またガイドへのヒアリングから、京都府レッドデータブックで絶滅種とされている種を近年頻繁に確認していたことなど、「ガイドの目」が研究林内の生物多様性モニタリング調査に有用であることが示唆された。そこで、芦生研究林において研究者とエコツアーガイドとの協働によるきのこ類の分布調査を実施した。
 市民科学においては、研究者と市民の間の公平性が求められ、双方に参加のメリットを感じられることが重要である。研究者にとっては、頻繁に芦生研究林に入るガイドにより、研究林内の希少種等の発見可能性を高めることができ、ガイドにとっては生物の生態や分類の知識を得ることでガイドの質を高めることが期待される。
 本発表では調査結果と合わせて、参加したガイドへのヒアリングから、市民が研究者に求めることや市民との調査に役立つツール等、今後の市民参加調査に有用と考えられたことを紹介する。


日本生態学会